2023年09月09日
談声初高座 琵琶と落語による鎮魂 立川談四楼独演会 2023/08/15
毎年この日は北澤八幡神社。と言っても、世の中いろいろあったので、久しぶり。
会場 : 北澤八幡神社参集殿
立川談声『子ほめ』
立川のの一『たらちね』
立川半四楼『金明竹』
立川談四楼『ぽんぽん唄』
仲入り
川島信子 薩摩琵琶
立川談四楼『一回こっくり』
木戸銭2500円(当日・会員価格)
●立川談声『子ほめ』
初高座。ここで初高座を聴くのは立川寸志さん以来か。ボイストレーナーで声優だったということでこの名前。女性です。春風亭一朝師の「いっちょうけんめい」みたいに使える。さすが談四楼師。●立川のの一『たらちね』
いやほんと達者な前座さんですよね。唄い調子の心地よさが半端ない。師匠の立川志ら乃師の持ち味もしっかり引き継いているし、先が楽しみでしょうがない。●立川半四楼『金明竹』
そろそろ前座に飽きてきているのかな。●立川談四楼『ぼんぼん唄』
と、いつものように前座が3人続いたあとで、いよいよ談四楼師。初高座の話をサラリとまくらに振って『ぼんぼん唄』へ。
僕は何度も聴いているが知らない人も多い噺だろう。
古今亭志ん生がよく掛けていた噺で、これを談四楼師が極上の人情噺に仕立て上げている。
作家である立川談四楼は噺をよく「リライト」する。
今年の『ぼんぼん唄』は、イントロダクション的な語りが実に絶妙で、噺の世界にスーッと引き釣りこまれる。
本当に誠実な人しか出てこない噺なんですけども、このささやかなストーリーが、実に泣ける。
この噺、談四楼師から教わって、他の人がやってほしいなと、ずっと思ってる。
仲入り
●川島信子 薩摩琵琶
今回もゲストが豪華。薩摩琵琶奏者の川島信子氏。
平家物語を語るために、普及した楽器、琵琶。
有名な『祇園精舎』から、安倍晴明が出てくる『葛の葉』。
語りながら奏でる琵琶の音のまあ多彩なこと。美しい調べからバチーンとパーカッシブな音、シタールのような音、大きな三角形の鉢で弦を叩く、擦り上げる。
圧倒された。
また声がいい。その力強さと哀愁。素晴らしい。
三曲目は「私は広島出身なので子どものころ、歌わされてました。でも今日は8月15日だし、こんなご時世ですし、歌いたいと思います」と『原爆許すまじ』。
ちょっと言葉が出ないくらい、素晴らしかった。
●立川談四楼『一回こっくり』
そしてトリネタはこちらも毎年恒例、立川談四楼師自作の『一回こっくり』。もとはこちらの小説の中に出てくる新作落語だったが、年々バージョンアップして傑作がまたさらに輝きを増しているのが素晴らしい。
さりげないイントロダクションから、さらりと若い大工の夫婦の会話へと入って、後はただただ江戸の世界に身を任せればいい。
談四楼師ぐらいのベテランになれば、噺をリライトしていくと、やや「通好み」に仕上がっていくことがあるように思う。
ところが師は「前よりわかりやすい。落語を聴いたことがない人にも伝わる」ように変えているのだ。それでいて野暮ったくは決してならない。さらに洗練されて、さらに初心者に優しい、これはやはり小説家のなせる技なのだろうか。
談四楼師の二席と薩摩琵琶で、この日8月15日にふさわしい『鎮魂と希望』が感じられる、素晴らしい一夜だった。幸せだった。
ただ一言言いたい。
『一回こっくり』は、もっと多くの人に聴いてほしい。
北沢八幡の8月15日に閉じ込めておいてはいけない噺なのではないだろうか。
どこかにいいプロデューサーはいないものだろうか。
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