2023年08月27日
圓朝忌のカランコロン 第140回日本橋つかさの会 2023/08/11
久しぶりに司師匠。

会場 : 薮伊豆総本店(日本橋)8月11日は三遊亭圓朝の命日で、お墓のある全生庵では行事も行われ、圓朝ゆかりの演目をかける落語家も結構いらっしゃる。
三遊亭司『怪談牡丹燈籠〜お札はがし〜』
仲入り
三遊亭司『星野屋』
木戸銭2,500円 お食事おアトもよろしくセット2,500円+飲み物
僕が足を運んだのは薮伊豆総本店「第140回日本橋つかさの会」三遊亭司師匠の会。
久しぶり。
●三遊亭司『怪談牡丹燈籠〜お札はがし〜』
大圓朝と司師匠の関係を見ると、三遊亭圓朝-初代圓右(二代目圓朝)-初代圓歌-二代目圓歌-三代目圓歌-歌司-司こんな感じ。実はしっかり繋がっている。
「ちゃんと墓参りもしてきました」そんなエピソードをまくらに振りつつ、命日にちなんでお札はがし。カランコロンですな。実際にはあんな音立てて歩けないそうですが、そもそも足だってあるかどうか。
正直、牡丹燈籠や乳房榎などの圓朝ものについては、三遊亭圓橘師のとてつもなく完成された高座を
聴いてしまっているので、どうしてもちょっと点が辛くなる。
といっても司師のも、なかなかいい。
なんといっても伴蔵(ともぞう)夫婦。恐怖と強欲のグラデーションが巧妙で、恐怖を押し付けない分、幽霊よりも「人間の強欲が恐怖を上回る瞬間」が一番怖い。だって幽霊から犯罪依頼されているわけですよ。なのにね、カネ欲しさが上回ると。
そういう意味では『栗橋宿』あたりをやってほしいなあと。
以前『居残り佐平次』で見せつけてくれた司師の演出力、情景描写が冴え渡るんじゃないかな。
ご存じの方も多いと思うが『怪談牡丹燈籠』は速記本で読むと『黒川孝助の仇討』と『お露新三郎〜伴蔵』という二つのストーリーが交互に同時進行し、『栗橋宿』のあたりから重なってくる。
この構造って村上春樹の名作『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』ととても似ているんだよ。
余談でした。
仲入り
●三遊亭司『星野屋』
怪談のあとは空気を入れ替えるというのが寄席業界の通例のようで。林家彦六(彦六の正蔵)はよく踊ってましたね、なんて話をしつつ「私の場合踊りはできませんので」と滑稽噺を。
このあたりのネタは司師お手の物と言うか。
お花の「間抜けな欲深さとプライド」が鮮やかに描かれる。
で、それで思っちゃったんだけど、この噺にでてくる男二人はちょっとひどいんじゃないの。
お花に「試験」を仕掛ける自体ですでに無粋だし、「試験」に落第したお花に、さらに「髪を切らせる」ようなトラップを仕掛けるのはひどすぎないか。「男二人寄ってたかって!」というお花の抗議はある意味とても正しい。
もちろんサゲによって婆さん以外の男も女もみんなバカ、というところで落語らしく終わるんだけど、どっちかというと男のダメさが際立ってる噺だなあと。
そんな事を考えた。
そんなこんなで、江戸落語の美味しいところ・かっこいいところ、すなわちスタイル・美学の部分を、決して押し付けることなくサラッと描いて見せる三遊亭司師の高座が楽しめるこの会、落語好きのあなたに心からおすすめしたい。
終演後は蕎麦と酒を楽しむこともできる。乙ですよ。


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【イベント】<日本橋つかさの会> 三遊亭司 - 薮伊豆総本店 - ぐるなび