2023年08月20日
挑む大御所 第412回 三遊亭圓橘の会 2023/07/29
●三遊亭萬丸『新聞記事』
毎回毎回、どっかしら成長を感じさせてくれる萬丸さんを聴くのは、楽しみの一つ。新聞記事、師匠・三遊亭萬橘師の型らしいけど、萬丸さんらしい大らかな感じがいい感じ。
前半、ちょっと『庭蟹』みたいな「洒落の通じない人」のボケがなかなか良かった。
●三遊亭圓橘『佃祭』
御存知の通りけっこうな長講で場面も要素も多いこの噺。まくらで「歯痛と梨と戸隠神社」が出てきたところで、あ、最後までやってくれると期待する。
これだけ色んな人が出てきて、その一人ひとりがいきいきと描かれる。いつもの圓橘師といえば、まあそれまでなんだけど改めてすごいことだなあと。
やっぱり好きなのは悔やみのシーンで、真に迫った与太郎の悔やみにはお見事としかいえないけれど、爆笑したのは「のろけの悔やみ」悔やみのはずがだんだん女房の惚気になっていってしまう、そのグラデーションの付け方が本当に見事で驚きながらの爆笑。
笑ったり驚いたり泣いたりしみじみしたり、圓橘師の掌の上で踊らされるような落語体験。
仲入り
●三遊亭圓橘『旗本の娘 おきよ その3』
圓橘師による連続物新作落語も第三章へ。このシリーズ、圓橘師は、さまざまなことに挑んでいる。
江戸の街を舞台にしているのに動物が出てくるし、それも化けない動物だし、歌川広重の絵から着想を得て「空から見た江戸」も出てきた。
今回もまた、圓橘師は挑んでいる。
とにかく台詞が少ない。といって地噺や講談のようなやり方とも違う。台詞と台詞のあいだに描写される感情がすごい。
今回、おきよが「犬を飼う」ことを諦めるのだが、その諦めがあまりにも早い。「旗本の娘」ならではの分別と捉えるべきなのだろうが、あまりにも早い諦めに、やがてこの娘に降りかかる厄災が予感されて、切ない。
今回、おきよが「犬を飼う」ことを諦めるのだが、その諦めがあまりにも早い。「旗本の娘」ならではの分別と捉えるべきなのだろうが、あまりにも早い諦めに、やがてこの娘に降りかかる厄災が予感されて、切ない。
この作品、圓橘師が落語化した岡本綺堂『不幸者』について、僕がこのブロクで余計なことを書いたことが何故かいい感じに拾っていただいて始まったとのこと。偶然とはいえ光栄の極みである。
で、今回、まくらで岡本綺堂が書き残した大正期の寄席の様子の話が楽しく、噺の世界に入っていく上でも極めて効果的だった。
それにしても、この後どうなってしまうのだろう。
で、今回、まくらで岡本綺堂が書き残した大正期の寄席の様子の話が楽しく、噺の世界に入っていく上でも極めて効果的だった。
それにしても、この後どうなってしまうのだろう。

次回はなんと『ちきり伊勢屋』
2023年8月26日(土)15時〜(開場14時半)三遊亭圓橘 萬丸「夏の医者」“東洋医学2000年、近代医学200年の歴史”「ちきり伊勢屋 その一 白井左近」“親の因果が子に報い”予約 2,500円 当日 2,800円・小〜高校生は1,500円
ぜひご来場を。