2023年07月16日
シンプルでスタイリッシュ 第411回圓橘の会 2023/06/24
できれば、ずっと圓橘師の落語を聴いていたいと思うことがある。
そんな贅沢叶うわけがないのだけど。

会場 : 深川東京モダン館
三遊亭萬丸『強情灸』
三遊亭圓橘『大山詣り』
仲入り
三遊亭圓橘『置いてけ堀』(岡本綺堂『三浦老人昔話』より)
木戸銭2,500円(予約)
●三遊亭萬丸『強情灸』
いつもの開口一番。ネタを増やしている真っ最中なのだろう。結構マニアックな演目を持ってくることも多かった萬丸さん、この日はオーソドックスな『強情灸』。
これが、良かった。
早すぎず遅すぎず、一番心地よいテンポの口調から、江戸っ子のかわいい愚かさが台詞でしっかりと表現され、さらにしっかりと捻られた(おそらく)独自のくすぐりが小気味よく炸裂する。
個性を感じさせながらきちんと客を満足させるあっぱれな高座で。萬丸さんはまた進化しているのだと改めて感じることができた。
●三遊亭圓橘『大山詣り』
「こういう事を言うとまた孫に甘いと言われますが」と萬丸さんの高座を軽く解説。三遊亭圓生師と八代目彦六の林家正蔵師のエピソード、これがまあ興味深くて。
圓生師の声掛けで、落語協会総出で大山参りに行ったときの写真を見ると、 なぜか彦六師がいないと。
やはりあまり仲が良くなかったせいか、でもお互いの芸を認め合っていた、みたいなお話。
で『大山詣り』。
この噺、めちゃくちゃ面白いんだけど、やってることは結構酷いわけですょ。みんな揃って丸坊主にしちゃうんですから。しかも女性たちを。
しかしここで圓橘師の「抑制」が冴え渡る。淡々としかし軽快で味わい深い語りの中に、生臭さはキレイに抜けて、噺のおかしさだけが伝わってくる。いっぱいでてくる登場人物たちも一人ひとりが素敵で、特に朝出てくる宿屋の女中がなんとも魅力的。
この乱暴な詐欺事件を楽しく楽しく仕上げて、最後にいかにも落語らしい、なんの解決にも繋がらない落ちでサゲてしまう。それに納得させられて、満足してしまう客。
素晴らしい。こういうのを名人芸と言う。
仲入り
●三遊亭圓橘『置いてけ堀』(岡本綺堂『三浦老人昔話』より)
トリネタは今回も岡本綺堂作品の落語化。三浦老人昔話シリーズから。例によって、筋としては大したドラマがない。このストーリーで聴衆を引き付ける圓橘師の凄さよ。
今回(やっと)気がついたんだけど、この三浦老人シリーズはたしかに怖い話なんだけど、三遊亭円朝作品のような「因縁」を感じない。前世がこうだからこうなったとか、親がこうだから子に祟った、みたいな「因縁」は円朝怪談の重要アイテムだけど、三浦老人の話からは出てこない。仏教の影響が薄いとも言えるのかな。怖い噺ではあるんだけど、その怖さはシンプル。
圓橘師が演出することにより、このシンプルな怖さにスタイリッシュな趣が加わる。なんというか、江戸前。怖さの余白に文学性がある。そしてここでも圓橘師の「抑制の美学」がかっこいい。
次回第412回は『佃祭』に新作シリーズ『旗本の娘・おきよ その三』

もう今から楽しみで。











