2023年07月16日

イリュージョン古典への挑戦 第五十三回 談吉百席2023/06/18


五十二回目までで掛けた噺はすでに百を超えているはずなんだけど、新作はノーカウント扱いにして八十八席なんだそうだ。

第五十三回にあたる今回、古典ねたおろしは二席。
これでちょうど九十席。
TRIPART_0001_BURST20230618211655776_COVER-EDIT 
会場 : としま区民センター小ホール(池袋)

立川談吉『松曳き』
立川談吉『田能久』

仲入り

立川談吉『猫の災難』


木戸銭2,000円


●立川談吉『松曳き』

ねたおろし。個人的には「ついに来たな」と。
今の落語ファンにとっては桃月庵白酒師のイメージが強いのかな。
ただやっぱりね、家元・立川談志が好きだった人にとっては、この噺は『談志イリュージョン落語』。
「イリュージョン落語を」といって噺に入り、ひたすらカオスな会話を積み重ねていく。
「伝達のために形を整え、言語化する」ことを放棄した「むき出しの意識」を、そのまま無理やり落語の台詞に落とし込むという、凄まじいものだった。

いま家元・談志イリュージョンを唯一継承しているのは直弟子・立川談吉その人だけなのである。

ただ談吉イリュージョンは、主に『ピッケル』『およそ3』『仏四噺』『生モノ干物』『竹とんぼ』など自作の新作によって展開されていた。
たまに『青菜』『天災』などの古典にフレーズとしてイリュージョンを練り込んでいることはあるが、やはりメインは新作であった。

今回『松曳き』は、談吉さんおそらく初めての「家元イリュージョン古典落語」への挑戦ということになる。

結論から言うと、古典落語としての『松曳き』を比較的きっちりやって、きちんと笑いはとったものの『天災』のような談吉ワールド構築はまだこれからという感じ。

「イリュージョン」は、必ずしてもそれ単独で落語に必要なものではないと思われるが、「家元イリュージョン落語」唯一の継承者として、この噺に改めて挑戦してほしいし、そんなこと僕が言わなくても挑戦してくれるのだろう。

それにしても、自ら提唱した「イリュージョン」を完成させることなくこの世を去った家元に、談吉さんの『仏四噺』『生モノ干物』を聴いてほしかった。
これがあなたの夢想していたイリュージョンでしょ!

●立川談吉『田能久』

二席目は安定の鉄板ネタ。すでにだいぶ前に完成しており、途中に挟むギャグが少しずつ新しくなっているくらい。何度聴いても面白い。

ところで今回、ある資料が配布された。
第五十二回までに掛けられた古典落語のリスト。
こういうことに無頓着な談吉さんを見かねて、スタッフが作成したもの。

見てみるとこれがいろいろ面白くて。
たとえば「釈ネタ」すなわち講釈種ががほぼない。
一方で家元・談志は講談師になることも考えていた講談好きで『慶安太平記』『妲己のお百』などを手掛けている。

今後、この田能久の蟒蛇(うわばみ)登場のあたりの地語りの見事さが、釈ネタ、とくにダーティーヒーロー登場のネタに生かされると面白いかもしれない、なんてことを考えた。


仲入り



●立川談吉『猫の災難』

ネタおろし。良かったですね。
なにしろほどが良い。ちょうどいい。

酔っぱらい、その意地汚さが、あくまで一連の「唄」として軽快に表現される。
ベロンベロンなんだけど、きつすぎない。愛せる範囲の酔っぱらい。

素晴らしいフレーズが出てきた「今日はいい休みだった」。
どこで出てくるかは伏せますが実にいい台詞で、特にこの日は休日だったので、自分の気持とも見事にシンクロしてしまった。なかなかない落語体験である。いい休みを過ごさせてもらったことを談吉さんに感謝するととともに、このネタが今後ますます育っていくことを期待しちゃうのだ。


DSC_0047


次回が8月29日火曜日でございます。 1スタッフとしてご来場お待ちしております。 ご予約ぜひぜひ。


これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。



m_shike at 12:30コメント(0)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
note 話芸(落語・講談・浪曲)×IT・マーケティング
サイト内検索
最新コメント
記事カテゴリ
メッセージ
パートナーブロガー 一覧 | アジャイルメディア・ネットワーク
記事検索
月別アーカイブ
アクセスカウンター
  • 累計: