2023年06月22日
充実の珍品まつり チャノマ第97回 23/06/06
前から来たかったチャノマ。
仕事の都合をつけてなんとか新宿無何有へと。

会場 : 新宿無何有チャノマは落語協会の二ツ目ユニット。
林家彦三『伽羅の下駄』
春風亭与いち『胴切り』
仲入り
金原亭小駒『麻のれん』
林家きよ彦『釣女その後』
木戸銭1,000円
メンバー:金原亭小駒・金原亭馬太郎・桃月庵白浪・林家彦三・柳亭市好・林家やま彦・林家きよ彦・春風亭与いち・三遊亭歌彦 の9名。毎週木曜日19時から新宿無何有で4人が登場する勉強会を開催している。
最近はなかの芸能小劇場で2人会もはじめたとのこと。
僕はこの落語会のアフタートーク配信が大好きで前からずっと聴いていて、やっと今回本物を聴けたというわけで。
●全員 オープニングトーク
小駒さんが腹を出して寝てお腹を壊すと、夏。みたいなトーク。やりすぎない、いい感じのわちゃわちゃ感が楽しい。●林家彦三『伽羅の下駄』
正雀一門らしいシブいネタ。初聴き。どうも林家彦六一門しか掛けないんじゃないか。三遊亭好楽師、林家彦丸師とか。江戸の豆腐屋に仙台のお殿様が水を飲みに来る。これ、大事件なんだけど、そんなに大したことにならないまんま、何の解決もなくストンと終わるってあたりがすごく落語っぽくて。これが彦三さんの語り口になんかあってしまう。こういう落語、僕は好き。
「林家正雀師を師匠に選ぶ青年」らしい、ちょっと硬めの語り口がクセになる感じ。なんかこの、文学青年っぽい佇まいが好き。小説もお書きになるらしい。
●春風亭与いち『胴切り』
一転して元気いっぱいの与いちさん。珍品につられて珍品を持ってきた。メンバーによると「寄席で掛けるのは三遊亭歌武蔵師くらい。身にカネが入る噺なので縁起を担いでトリ芝居の初日にやる」とのこと。ややオーバーアクト気味だけど要所はきれいに決める与いちさん、この噺ぴったりあってる。こんにゃく踏むところが特に良かったなあ。珍品と言わずガンガン掛けて欲しい。
端正な顔立ちもいいけど、ときに目をむくと、なぜか三笑亭笑三師を思い出す。世代が違いすぎるわ。
仲入り
●金原亭小駒『麻のれん』
初めて。さすがのサラブレット、まあきれいな語り口でいっぺんにファンになってしまった。まくらの間に一瞬見せるブラックな側面もまたいい。なんとなく桃月庵白酒師を連想した。
扇辰師のイメージが強いこの噺、しっかり自分色に染めているあたりは只者ではない。しっかり滑稽味を出しながら、盲人の強がりの裏にある悲哀もちゃんと匂わせている。うん。いいね。
これは他の噺も聴いてみないと。
●林家きよ彦『釣女その後』
きよ彦さん作のこの噺を聴くのは2回目。なのにゲラゲラ笑えるし、ときにうっすら涙が流れていたりする。
釣女についてはこちらをどうぞ。元は常磐津。歌舞伎で見たことある人もあるでしょう。僕は知らなかった。まあ滑稽な話ですよね。
人間国宝の義太夫語りの方から、この続きを作ってくれないかという依頼を受けてきよ彦さんが創作したという。
福祉関係のお仕事をしていたきよ彦さんらしく、いくつかの「社会的課題」が根底に流れている。しかしそれがわかるのは最後の方で、押しつけがましさや説教臭さがまるでないのが素晴らしい。
古典の「続き」で、旧来の価値観に対して批判的な視点を持ちつつ、きちんとエンターテインメントに仕立てているのがとにかく素晴らしい。
いやそんなややこしい話はどうでもよく、主人公のおふくちゃんがとにかくいじらしくて可愛い。夫の太郎冠者がまた爽やかで気持ちのいい男。漫画的な手法でキャラをわかりやすく造形するきよ彦さんの手腕が冴える。
散々笑える噺なのに、やっぱり何箇所かは泣いてしまう。こういうものを作れるきよ彦さんはやっぱりすごいなあ。
チャノマ、予想通りいい企画でした。もうすぐ100回目だそうです。
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