2022年12月11日
文芸新シリーズ開始 第405回 圓橘の会 2022/11/27
いつもの圓橘師匠の会なんですけど、いやちょっとびっくりしたことが。

会場 : 深川東京モダン館
三遊亭萬丸『雪てん』
三遊亭圓橘『文違い』
仲入り
三遊亭圓橘『旗本の娘・おきよ』
木戸銭2,500円(予約)
●三遊亭萬丸『雪てん』
初めて聴いた噺。『雑俳』の別バージョンみたいな感じだけど面白い。萬丸さんは毎回・毎月ちょっとずつ自分の進歩を見せてくれてる気がする。落語の演じ方だけでなく、着物の着方とか、羽織の脱ぎ方なんかも何気に良かったりして。
●三遊亭圓橘『文違い』
江戸の廓噺を堪能。圓橘師の名演によって、改めてこの噺は難しいなあと実感した。「男と女のコンゲーム」の面白さと、滑稽噺としての可笑しさと、廓ならではの艶と粋。いいねえ。
緻密に構成された噺の落ちが「田舎大尽の得意げな笑顔」なんですね。この顔がね、素晴らしいのですよ。滑稽噺の真髄みたいな表情でした。
仲入り
●三遊亭圓橘『旗本の娘・おきよ』
そして今回のびっくり。ネタ出しの演目を見て、これは『不孝者』のあの娘だと思った。昨年10月の圓橘の会
●三遊亭圓橘『不孝者』(原作:岡本綺堂)岡本綺堂シリーズであるのだけど、謎解きの要素もなく勧善懲悪でもなければ人情ほろりもない。なんにもない。ただただ悲惨で痛ましく救いのない、苦い噺。はっきり言って、他の落語家が掛けたら聴けたもんじゃない。そんなネタを圓橘師は丁寧にきっちりと料理する。台詞には抑制されながらしっかりと込められた感情があり、地語りの格調は不条理な世の中を淡々としかし力強く訴える。聴き終えるとそこには感慨と満足感があるのが不思議でしょうがない。文学だなあ、と思う。
どうも圓橘師、この記事に反応されたようで、
「とある方に"おきよがあまりにも可愛そうだ"とお叱りを受けまして、このおきよを主人公にした噺をシリーズで手掛けることにしました」と。いや、わたし叱ってませんですからね。うーん、でも他のお客様が「叱った」のかも。
ともかく、というわけで圓橘師による新作・新シリーズ開始です。
おきよは幼少で、同年代の男の子たちと「貝回し」(ばい回し・ベーゴマの先祖か)に興じるシーンがなんともいい。圓橘ご自身のベーゴマの思い出も語られてこれもいい。
そしてふくろう、あのふくろうの存在は謎ですねえ。いいですねえ。
今後の展開が楽しみ。
次回は12月18日 新春圓橘一門会も楽しみです 年末のネタ出し樋口一葉作『大つごもり』があるのが嬉しい。
