『シェアする落語』12月の次は3月

2022年01月24日

『黄金風景』で落語はまた進化した 新宿末廣亭1月下席夜の部 主任:瀧川鯉八


2021年1月下席、休席が続いていた東京落語界の救世主は瀧川鯉八だった。

今思えば、披露目直後で僕も気持ちがたかぶっていたんでしょうね。披露目興行の終了直後、(所属する)落語芸術協会の方に「各寄席のお席亭さんに、必ず満員にするからトリに使ってほしい、万が一満員にできなかったらもう一生トリをとれなくてもいいと伝えてください」と言ったんです。芸人から「トリをとる」と言い出すなんて頭がおかしいというか(笑)異例だと思いますが、「僕をここまで育ててくれた寄席を救いたい!」という純粋な気持ちからの行動でした。まあ色々な事情が重なって出番がいただけたんでしょうけど、「じゃあやらせてみようじゃないか」とノってくださったお席亭には感謝しかありません。10日間のトリを経験してみると、やっぱり最後の最後に出ていく大変さと光栄さと、両方を実感しました。全ての演者さんに助けてもらった、楽しい10日間でしたね。
僕も楽しませていただいた。

さて今年。はっきり言って感染者数は昨年1月より多い。しかし世の中はそれほど萎縮していない気もする。中止になった落語会もあるけど、寄席は全て開いているし、一つ飛ばしのソーシャルディスタンス席にもなってない。

そんな中での主任鯉八興行でございます。

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会場 : 新宿末廣亭

三遊亭げん馬『穴子でからぬけ』
春風亭昇輔『ワンダーマジック』
マグナム小林 バイオリン漫談
柳亭小痴楽『真田小僧』
三遊亭王楽『うつけもの』
檜山うめ吉 俗曲と踊り
春風亭鯉枝『ディス・イズ・ア・ペン』
三遊亭遊喜『加賀の千代』
ぴろき ウクレレ漫談
古今亭今輔『ぼくの彼女はくの一』

仲入り

瀧川鯉丸『片棒』
宮田陽・昇 漫才
玉川太福(曲師 玉川みね子)『鹿島の棒祭り』
三笑亭夢丸『のっぺらぼう』
ボンボンブラザース 曲芸
瀧川鯉八『黄金風景 』

木戸銭3,000円
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●三遊亭げん馬『穴子でからぬけ』

まだメクリ(見出し)もないニューフェイス。ちゃんとしてます。

●春風亭昇輔『ワンダーマジック』

おお、鯉朝師のお弟子だね。もう、ケレン味たっぷり。おんなじ手ぬぐいいくつもってんだよというギミック新作落語。「スリー・ツー・ワン・ダー」というマジックの掛け声がやたら面白い。


●マグナム小林 バイオリン漫談

おお、噂の「洋装」マグナム先生。タキシード似合っております。大正演歌のときにはまた袴に戻るのでしょう。いいね。天国と地獄がめちゃくちゃスピード速くて凄かった。

●柳亭小痴楽『真田小僧』

ワンダーマジックしっかりネタにして場がぐっと盛り上がる。生意気な小僧はもうお手の物。受けておりました。

●三遊亭王楽『うつけもの』

笑点ネタで沸かせてから自作の新作。あれ、面白い。王楽師は古典のほうがいいなあと思ったんだけど。『道灌』みたいな、きっちりしたオウム返しでわかりやすい。あと固有名詞のぶち込み方がいいっすね。

●檜山うめ吉 俗曲と踊り

久しぶり。かーわいいー。ピンクのお召し物がまあ可愛い。お声も踊りも可愛らしくていいですねー。喋りもさり気なく面白いし。

●春風亭鯉枝『ディス・イズ・ア・ペン』

おお、初めて見た。なんか療養されていたんですよね。
なんだろう、師匠・春風亭柳昇に荒井注を掛け合わせたような不思議な芸風で、じわじわ面白い。

●三遊亭遊喜『加賀の千代』

「『ヨネスケチャンネル』で鯉八が俺のこと"若手の財布"って言いやがって」などとぼやきつつ、愛嬌たっぷりの高座。

●ぴろき ウクレレ漫談

おなじみ。ヒットするのは10に1くらいなんだけど、その1で大爆笑しちゃうんだよな。あとウクレレの音がやたらいいのは楽器がいいのかマイクが良くなったのか。むかしはギタレレでしたよね。

●古今亭今輔『ぼくの彼女はくの一』

今輔師の新作は面白いよ!
なんか評価低くないか?個人的にはどのネタも面白いんですが。
鴨川つばめや内崎まさとしなどの70年代ギャグマンガみたいな分かりやすい自由さがある。「なめくじの忍者→塩かけたらすぐ死ぬ。弱い」がめちゃくちゃツボだった。

仲入り



●瀧川鯉丸『片棒』

素晴らしいですね。明るい。声が通る。噺をそんなにいじらなくても面白い。最後までやったのも偉い。この人はいいです。クイツキ大成功。

●宮田陽・昇 漫才

地図ネタが拡張していた。すでに確立した鉄板ネタをさらに磨きかけているあたり、素晴らしい。

●玉川太福(曲師 玉川みね子)『鹿島の棒祭り』

この日は正統派の俠客もの。この尺に縮めるのは大変。というところも含めてお見事。

●三笑亭夢丸『のっぺらぼう』

「鯉八さん気合入っています。『今日は僕短めなんであにさん長めにお願いします』と言われました」と「三日かかる」ネタへ。まあとにかく、この師匠は外したことないですから。

●ボンボンブラザース 曲芸

いつもの楽しいやつ。最前列のちょっとアレな客(スタッフに注意されていた)に紙立ての紙を拾わせるあたり上手いなあと。

●瀧川鯉八『黄金風景』

というわけでいよいよトリ。客席の興奮もすごい。
「一人でホテルのお高いランチバイキングを食べに行った話」のまくらは文句なく笑えるんだけど、例によってここからもう鯉八ワールドは始まっている。
しかしまあ、今回の鯉八ワールドには圧倒された。感想を文字にするのがとても難しい。
笑った。確かに笑った。貧しい家族のたくましさに笑った。
泣いてはいない、けれど、少年の心情を想いながら泣いても良かったかもしれない。
一つだけ言えるのは、これは人情噺だということ。2020年代の人情噺。
鯉八師による「落語という概念の拡張」は今年も続くのだろう。
演目は太宰治の小説から取ったという。

でも安心してください。落語だから。そんなに身構えて聴く必要はまったくない。

拍手が凄かった。

前述の通り、自らの志願により始まった昨年1月下席夜の鯉八芝居は、苦境にあえぐ寄席の世界における希望だった。
今年はもう、そんなことはどうでも良くて、ただとても面白い、誰かを誘って通いたくなる寄席の番組だ。

30日までやってます。お時間あれば、ぜひ。




m_shike at 09:30コメント(0)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

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