2021年12月17日
不条理と父親 一龍斎貞寿の会 2021/12/11
写真撮りわすれちゃったんで、昔の記事から。

(貞寿、保護猫に囲まれながら保護猫を読む ねこりぱ寄席 2017/05/13 より)
会場 : らくごカフェ
一龍斎貞寿『錦の舞衣(1)』
仲入り
一龍斎貞寿『は組小町』
木戸銭2,300円
●一龍斎貞寿『錦の舞衣(1)』
久しぶりの貞寿先生。相変わらず100%の笑顔が眩しい。「今日読むところは、まだ何も起こりません」と言っていたわりに、けっこういろいろ起きちゃって面白い。
前半はなんとなく『仙台の鬼夫婦』みたいな、女(踊りの師匠・お須賀)に尻叩かれて江戸を離れ修行する男の話。主人公は絵師・狩野鞠信だけどね。
後半はなんと大塩平八郎の乱が絡んで一気に不穏な空気。このあと三遊亭圓朝らしい複雑な展開になるんだろうなあ。
貞寿先生はきれいに人物を描き分けていく。なかでも前半と後半でお須賀のキャラ変化がお見事。ちなみに前半のほうが好き。
仲入り
●一龍斎貞寿『は組小町』
神田伯山先生監修の『ひらばのひと』細部の描き込みが素晴らしい、めちゃくちゃ面白い講談マンガなのであります。
2巻の最後に出てくるのがこの『は組小町』。この回は貞寿先生も監修に加わっている。
貞寿先生にとっては二ツ目昇進直後に教わった、思い入れの深いネタで、僕もこの会で聴いたことがある。
正直、あまり好きなネタではない。仮にも火消しトップの息子が、横恋慕から火事場で殺人やらかすかね?結末の後味も良くない。
けれど、
これが良かったのよ。
貞寿先生の人物造形が素晴らしく、特に父親の心理描写がもう圧巻。
不条理なかたちで娘夫婦を失うという悲劇を、しっかりと自分のものとして引き受け、本懐を遂げて死にゆく娘を見送る姿が感動的で、涙さえ出てきた。
好きじゃないネタで感動させられると、なんか「ねじ伏せられた」ような、不思議な爽快感があるなあ。
久々の貞寿先生、堪能させていただきました。