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2021年05月30日

名作から生まれた傑作 第389回圓橘の会 2021/05/29 #三遊亭圓橘


今月の圓橘師匠、ネタ出し『残り香』は原作O・ヘンリーの「噺化」。
これがまあ、素晴らしかった。

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会場 : 深川東京モダン館

三遊亭萬丸『湯屋番』
三遊亭圓橘『帯久』

仲入り

三遊亭圓橘『残り香』(原作:O・ヘンリー)

木戸銭2,500円(予約)


●三遊亭萬丸『湯屋番』

少しずつ 少しずつ、腕を上げていくのを観ているのは楽しい。
尺の都合なのかもともとの型なのか、前半はかなり刈り込んで、後半の番台シーンを軽快に楽しそうに演じていた。
「泳ぐように」でメドレーになるところなんか、やたらおかしい。なんで背泳ぎ。

たぶんそのうち、もっと派手に狂うようになると思う。

●三遊亭圓橘『帯久』

「いまの萬丸の湯屋番、テンポがあって良かったので褒めておいた。三遊亭道楽から習ったそう。褒められるのは嬉しいもので……」

むかしむかしの楽屋雀たちによる「この師匠が落語家になっていなかったら、なんの商売をしていたか」の話が素敵に面白い。
三遊亭圓生は呉服屋、先代・桂文楽は寿司屋、三代目三遊亭金馬は古道具屋(僕は古本屋かと思った)、そして古今亭志ん生は……。ちょこちょこ物真似が入ってくるところがたまらない。
ここから圓生の得意ネタへ。

成功者・帯久の憎ったらしさがもはや某幹事長クラス。
不機嫌な表情も、微妙に変化する肩のゆすり方からも、了見の悪さと小心がダイレクトに伝わってくる。
和泉屋与兵衛の店の丁稚たちや、帯屋の番頭など、脇役一人ひとりまで綺麗に磨き上げられているのもまた心地よい。

ちなみにおそらく唯一の、Vサインが見られる古典落語、だったりして。

仲入り


●三遊亭圓橘『残り香』(原作:O・ヘンリー)

言わずと知れた短編小説の名手、オー・ヘンリーの『よみがえった改心』(『改心した男』『よみがえった良心』など、いろんな邦題がある)。
追記 : 原作、こちらで読めるそうです。 
青空文庫:罪と覚悟 
これを古典落語・文芸落語の名手・三遊亭圓橘が「噺化」つまり落語に仕立てる趣向。

結論から申し上げましょう。傑作です

原作では舞台は米国南部の田舎町、これを明治維新前後の江戸と横浜に置き変えたセンスが素晴らしい。驚くほど無理がなく自然なのだ。

前半の江戸パートは、質屋の蔵、彫金師、煙草(国分)。
後半は横浜、運上所(税関)に中華料理屋に赤レンガ。

人物もまた、しっかり粒立って魅力的ときている。
江戸の彫金師をいい男に仕立てておいて、維新後は山高帽にフロックコート。これを簡潔な語りで描写すると、そこにはもう彼がいる。過去に犯した罪を背負って。
彼を追っていた岡っ引きも、腕を買われてて刑事となり、この二人が偶然に再会するという展開。

筋立て道具立てに隙がないので、いつもの抑制の聴いた語り口によって、浮かび上がるイメージが鮮やかだ。

O・ヘンリーらしい気の利いたプロットを、大げさなドラマや湿っぽい「泣き」に持っていくことなく、あくまで落語らしい、しみじみとした情感のなかでさらりと聴かせて、聴き手の心に残るのはささやかな希望。

繰り返すけど、これは傑作です。
岡本綺堂作品や樋口一葉『大つごもり』など、圓橘師の小説を原作とした『文芸落語』のラインに、またひとつ傑作が加わりました。

オー・ヘンリー傑作集2 最後のひと葉 (角川文庫)

終演後に流され、演者が客とともに楽しんだのがこの曲。
バークリー・スクエアのナイチンゲール  アニタ・オデイ

緊急事態宣言のせいもあり、外出を控えざるを得なかった今月、生の落語は、この会だけだった。
それだけに、こんなささやかで確かな希望がいただけたことを圓橘師にお礼申し上げたい。
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御一新を挟んだ刑事物ということで、井上ひさしの『合牢者』という短編を思い出した(よく思い出したね。たぶん40年くらい前に読んだ本だ)。
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次回はこちら。なんと髪結新三の通しです。
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m_shike at 20:30コメント(0)落語 | 三遊亭圓橘 このエントリーをはてなブックマークに追加

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