2021年02月07日
勢いと上手さの充実 第139回 柳家一琴の会 2021/02/07
久しぶりのらくごカフェは、前々から行きたかった柳家一琴師の会。
会場 : らくごカフェ
柳家一琴『大工調べ』
仲入り
柳家一琴『アジアそば』(作:三遊亭白鳥)
柳家一琴『干物箱』
木戸銭2,000円(予約)
●柳家一琴『大工調べ』
開演前の高座に釈台、後ろに椅子。
変だなと思ったら膝を傷められて、椅子に座ってしゃべるとのこと。意外と違和感はないが、ご本人はやりにくかったろう。
バカよりも可愛さが際立つ与太郎と、因業大家の顔の怖さと切れるときの豹変ぶりが鮮やか。しかもしっかりお裁きまで。お白砂から出たり入ったりが面白い。
一時期、いろんな二ツ目がこのネタを競うようにかけていたことがある。聴きすぎて、なんだか言い立ての競技会のような感じが今ひとつ好きになれなかった。客も客でやたらとの中手(噺の途中の拍手)を入れるんだよな(そういう意味では立川談吉さん・立川寸志さんのが好きだった)。
一琴師の言い立てはやたらスピードを強調せず、一つひとつの言葉がちゃんと入ってくる。こうでなくちゃね。
仲入り
●柳家一琴『アジアそば』(作:三遊亭白鳥)
「自分で起こした速記が見当たらない。どうやらこの噺だけは習ったときに書かなかったらしい。そんな噺」と、そばに関する江戸小噺からなんと営業マン登場。白鳥ワールドへ突入。
一琴師は「新潟時代」の白鳥師に習ってそのまま演っているとのことで、その後、白鳥師がこのネタをだいぶいじっていることがよく分かる。つまり初期バージョンを一琴師が保存していることになり、これは貴重。
たぶんよく言われていることなんだろうけど、古典の名手による白鳥作品には独特の面白さがある。一琴師がインド人を演じるのは多分このネタだけ。それも含めて貴重だし。なにより笑える。
●柳家一琴『干物箱』
白鳥師の話から、これまた僕の好きな噺へ。
特に好きなシーン「貸本屋・善公宅の戸」のセリフがしっかり丁寧で、やたらおかしい。善公が身代わりに二階に上がってからは、あのシーンをカットしてこのシーンを前に出すのも良い感じ。
バレるまではどこか優しい親父と、程よく放蕩してる孝太郎の加減の良さが一琴師の持ち味と感じた。
そう、程が良い。バランスが良い。
メリハリを効かせるところの勢いと、年月をかけてしっかり磨いた技術。
力と技がちょうど程よく溶け合っていて、さすがの充実ぶり。
楽しませていただきしました。
次回は3/7(日)だそうです。落語好きにおすすめします。ご予約はらくごカフェまで。