2020年09月27日
この秋 初めて冬を感じた 寸志ねたおろし 2020/09/26 #立川寸志
少し肌寒くなったので、このネタはおあつらえ向きというやつ。

会場 : お江戸日本橋亭
立川寸志『蜀山人』
立川縄四楼『やかん』
立川寸志『幽女買い』
仲入り
立川寸志『うどんや』
木戸銭1,500円(予約)
●立川寸志『蜀山人』
「きょうはそんなに長いネタはありませんから」まくらで笑いを取ってから、家元・立川談志の録音で聴いたことがあるこの噺。味わい深い寸志さんの地語りが楽しめる。後半、初鰹を持ってくる魚屋もいい。『紫檀楼古木』もそうだけど、狂歌師の噺は大人の余裕があって、僕は大好き。
俳句がお上手な寸志さん、狂歌を読み上げる調子がまたいいんだ。「やるたびしくじるトラウマ噺」とパンフに書いてあったが、前はいったいどこをしくじったんだろう。
●立川縄四楼『やかん』
うーん、怒鳴ってもなあ。●立川寸志『幽女買い』
こちらも家元の録音で聴いたことがある噺で、そもそも家元が小噺から仕立てたものであることを、この日のパンフで知る。さらに工夫を加えた立川談慶師から寸志さんは教わったと。江戸版の地獄八景みたいな噺だが、江戸っ子らしい調子の良さと地口の楽しさがいい。寸志さんにも合ってるし、珍品扱いは惜しい噺だと思う。
立川談吉さんにも似合いそう。
仲入り
●立川寸志『うどんや』
客電を落として、ちょつと夜の雰囲気を出していた。『蜘蛛駕籠』みたいなアラクマサン(酔って同じ話を繰り返す人)が引っ張る前半では「蜀山人とついてる」などと、言わなくていいことを混ぜつつ、炭に手をかざすところでまずグッと来る。
ふつふつと熾る赤い火が見えるようだ。
子供を寝かしつけた母親の台詞にすら冬の夜を感じる。
小さな声で喋る最後の客とのやり取りで寒さと暗さ、ほのかな明るさすら見えてくる。鍋焼きうどんはうまそう。そして秀逸な落ちもいいサゲ加減で。
五代目小さんは、実はそんなに好きじゃないし、そんなに聴いてもいないけど、この噺だけは大好きなので、聴けて嬉しかった。
時節柄お見送りはとりやめ。外に出てみると、さして寒くはない。まだ9月だ。
でも今夜、僕は感じたのだ。
この秋、初めての冬を。
