2019年11月10日
[書籍]まくらばな (柳亭小痴楽) は傑作である

(真打昇進披露パーティより)
豪快にして軽快!!そしてしっかり突き刺さる珠玉のエピソードたち
その鮮やかな東京言葉と軽快な語り口で人気の若手落語家・柳亭小痴楽。
自らの真打昇進とともに解散した二ツ目落語家ユニット『成金』のリーダーであり、『落語DEEPER』などテレビ・ラジオでの活躍も目覚ましい。
山ほど面白いエピソードを抱えていることはよく知っていたので期待して読んだ初のエッセイ集。
びっくりした。
期待を、遥かに超えていた。おそらく原稿用紙で数枚程度の文字数しかない、冒頭の家出に関するエピソード『青春夜明け前』で、泣いた。もうボロボロ泣いた。まだ11ページなのに。その後は、まあ笑った。笑った笑った!!ページをめくるたびに、ニヤリ・ニヤリ・ぶはははは。息も苦しいほどの大爆笑。63ページでまた泣いたけど。豪放磊落な父・五代目柳亭痴楽と、その痴楽を上回る豪快な母、そして兄との奇妙キテレツな家族エピソードの数々は、そのひとつひとつが強烈な輝きをもって読者の心に突き刺さってくる。古今亭志ん朝・桂歌丸など、落語界の大御所たちが登場するシーンも、逸話としてとても貴重で、しかもとびっきり面白い。無駄な修飾がまったくなく、ひたすら軽妙でテンポよく語る文体は、まさに著者・柳亭小痴楽の落語そのもの。一冊の本が、最初から最後まで躍動している。ここまで、人の心を心地よく揺さぶり続ける本はめったにあるものではない。ただ、一言だけ言っておくと、柳亭小痴楽の落語は、この本より面白い。そして、こんな面白い本を書くことができる柳亭小痴楽の落語は、これからもっと面白くなるのだ。まずご一読いただいた上で、ぜひ生で小痴楽師匠の落語に触れていただきたい。いや、読めば必ず聴きたくなると思うけどね。