2014年10月07日

ドージン落語はあまりにも落語 第6回ドージン落語会 2014/10/04 一琴 鯉朝


萌えオタについては、詳しくない。

萌えアニメでちゃんと見たのはハルヒくらいで、後はほとんど知らない。
当然コミケも行ったことがない。
けど、なぜかオタな人たちの青春模様を描いた『げんしけん』というマンガは長年愛読している。
ちっともわからない固有名詞とスラングに手を焼きながら楽しんでいる。

そんな感じの私が、井上新五郎正隆先生が主催する『ドージン落語会』に足を運んでみましたよ。

2014年09月14日14時27分22秒

柳家一琴『ウチアゲ万歳』
瀧川鯉朝『六年アキバ組』

仲入り

瀧川鯉朝『金明竹・序』
柳家一琴『夢八』 


●柳家一琴『ウチアゲ万歳』(作・井上新五郎正隆)
よく考えたら生の一琴師は初めてだわ。TBS落語研究会でよく観ていたせいかそんな気がしない。

「自分が見たことない江戸時代について、いろいろ調べながら組み立てていく、だから古典落語とドージン落語はアプローチは同じ。問題はオタ文化について知識を増やしても、その後全く使い道がない」あはは。なるほど。

 
噺がねえ、良くできてるんですよ。
同人の人たちが即売会の打ち上げでワイワイ。
寄合酒や酢豆腐なんかを思わせる「みんなで飲んでワイワイ」の噺。打上げでの会話が盛り上がるたんびにキャラが増えていく。

でもキャラの魅力で引っ張るのではなく、あくまでエピソードのひとつひとつの面白さがグルーヴしていく。

一琴師の料理もまた見事。DVDで拝見した前回の『男の娘』はコスプレイヤーの幽霊が男の子に取りついたり離れたりするという、古典落語じゃありえない設定で「俺、小三治一門なんだけどなあ」とぼやきながら悪戦苦闘されていたが、今回は、ちょっと風格すら感じる余裕ある語り口の中で「個撮」(コスの娘とマンツーマンで実施する撮影会、のことらしい)なんて単語がポンポン出てくる男たちの会話を生き生きと描いてみせた。力量半端ない。

ちょっと歪んだ性的欲望。それ自体は江戸落語的な粋とは程遠いけど、オタたちが自らの欲望にしっかりと向き合い、仲間に向けて語ることで、落語的な世界が見えてくる。

古典落語のなかにも、ひたすらもてたいとか、妄想の中から出てこなくなったとか、そんな噺いくつもあるものね。



●瀧川鯉朝『六年アキバ組』(作・井上新五郎正隆)
井上先生、鯉朝師にはさらにアブナイ世界をご用意。確かにこの会でしかできないなこれは。
要は小学校の文化祭で、小学生がキャバクラとかフーゾクみたいなことをするという噺ですから。
 
こっちはキャラが立ってます。スキンヘッド迷彩服のオタクが小学校潜入。
やたらセールストークのうまい、キャバクラのポン引き役になる男子小学生向かって「君、柳家小太郎じゃないよね」というのは落語ファンに対する鯉朝師のサービス。
女子小学生はスク水で登場、そのトークは奇想天外でありながら、ちょいと社会批評も入りつつ。
途中何度か唖然としながら楽しませていただきました。

鯉朝師はこの噺を掛けるのがものすごくプレッシャーだったらしく、終わったあとの解放感の表現がものすごかった。「あー終わったー!」
 

●瀧川鯉朝『金明竹・序』
すっかり緊張の解けた鯉朝師。伸び伸びと古典を。古典改作というべきか。
噺がもちろん素晴らしいんだけど、ヲタ業界からいらしたと思われるお客さんの受け方が半端なくて驚く。
鯉朝オリジナルのギャグが受けるのは分かるけど、落語ファンならだれでも知っているフレーズでもドカーンと来るのが、心地よい。落語、好きになったんじゃないですかね?


●柳家一琴『夢八』
出ました名作。二ツ目時代の一之輔師が掛けていたのを聴いて、この噺の大ファンになっていたのだが、その一之輔師にこの『夢八』を教えたのが一琴師。なので一琴師からも聴いてみたいと思っていたら、いきなり祈願成就。

しかも、とても良かった。

表現にひたすらこだわる同人な方々なら、一琴師の「煮しめの食い方」に痺れたはずだ。大家と八兵衛の軽妙なやり取りにグッと来たはずだ。爆笑をもたらすのは物語の構造やギャグだけではなく、表現のディティールなんだ。
細部がきっちりと作りこまれながらあくまで滑稽な一琴師の充実した芸で、同人な方も、落語、好きになったんじゃないですかね?


僕は、落語を聴く人を少しでも増やしたくて、自分で落語会をやっている。
そして、できたら自分で落語を書いてみたいと思っている。 


この二つを思い切り先取りして実現されているのが、井上先生。
憧れますねえ。

 その井上先生に『シェアする落語』を大変褒めてもらっているのが、嬉しかったりするんですけどね。


m_shike at 09:30コメント(0)トラックバック(0)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

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