『シェアする落語』次回は7/7です。

2011年04月04日

雷門獅篭2011東京落語会I@神保町らくごカフェ #rakugo


110402chicagotko



1月2月は忙しく、3月はなんとあんなことになってしまった。

そんなわけで久しぶりの落語。らくごカフェで獅篭さん。



■雷門獅篭「時きしめん」
開口一番から登場。マクラからゆったりと客を暖めていい滑り出し。噺は言わずとも分かる時そば・時うどんの名古屋版で、これが実に軽妙に落語パロディ落語になっていた。名古屋弁が出てくる落語は円丈師の金明竹くらいだなあ、聴いたことあるの。


■立川談奈「権兵衛狸」
なんといっても家元談志の得意ネタとして有名なこの噺。談奈さんらしく作りこみ過ぎない抑制の効いた爽やかな感じにまとめた。けどまくらがばたばたと余裕がなかったのは、やっぱり最前列を気にしすぎたかな。


■雷門獅篭「万博料亭」
ゲストを二番目に挟むことでいもつなぎ解消。とてもいい。
二席目はやはり名古屋ネタの新作で、よくできた噺だと思う。『二階ぞめき』みたいなつくりにするのも面白いかも、とちょっと思った。万博ネタはインパクトあるので、まだいくらでも育てようのある噺。


お仲入り


■雷門獅篭「紺屋高尾」
いきなりまくらでとちってひやっとするが、あとはすんなり噺へと津連れて行ってくれた。とくに親方の軽妙さ、江戸っ子の軽さと人情を感じさせてくれるリズムに工夫が感じられ、やっぱりちゃんとほろっとさせてくれるあたり、大変楽しませてもらった。


さて、

落語とは大変弱い芸能である。

この日も、最前列に親に連れてこられた小学生の男の子がいた。いつぞやの落語天才少年ならともかく、落語なんかに興味を持つはずもなく、談奈さんを慌てさせ、紺屋高尾の時にはすっかり飽きてお絵かきしていた。客としてはいい迷惑だ。

子どもひとりが邪魔するだけで損なわれてしまう。落語はかくも弱い。昨年末の家元談志の芝浜も、一人の不調法者のせいでずいぶんとそこなわれた。

しかし、落語は強い。

今回の落語会、獅篭さん本人は決して最後までそのことを言わなかったが(談奈さんが説明していた。いいフォローだ)、チャリティイベントであり木戸銭は赤十字に行くという。わざわざ名古屋から東京に来て三席みっちり演ってノーギャラである。

2万の人がいなくなり、放射性物質は海に流れ続けている今、落語なんか聞いている場合ではない、のかもしれない。


しかしそうした巨大でどうしもない現実に対して、わずか一人で、その現実に拮抗する虚構をこしらえるというのが落語家の仕事だ。

そういう「とてつもない仕事」に対して何のてらいもなくまっすぐに取り組む姿勢を、僕はこの夜の獅篭さんに見た。
紺屋高尾という古典の名作、その噺の持つ力と、獅篭さんの中にあるかつての師匠、家元・立川談志が、その獅篭さんを後押ししていた。

高尾をもっとうまく演る落語家は他にもいるだろう。
しかし、この夜、獅篭さんは落語家として、大変かっこ良かったのだった。

以前よりずっと暗い街を抜けていく夜行バスに揺られて、獅篭さんは名古屋に帰っていった。


落語には力がある、僕はそう確信した。
させてくれたのは獅篭さんと、紺屋高尾だった。


m_shike at 09:25コメント(0)トラックバック(0)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

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