2010年07月23日
早稲田大学で宮武外骨と蛙男商会について講義してきた
伊藤昌亮先生(愛知淑徳大)のご厚意で、先生が講師を勤める早稲田大学文化構想学部の授業「デジタルメディアと社会」でゲスト講義をさせていただいた。前年度に続いて二回目。

ふつうこういうゲスト講義って、社会人が仕事の経験を生かして実学的なことを話すことが多いと思うのだが、僕は自分のビジネスとはまったく関係ないことを扱ってる。過去四回の大学での講義が全部そんな感じ。

前回はムネオハウス・2ちやんねるカーリング生中継・やる夫・アイドルマスターとPerfumeなどここ数年あちこちの講演で使っているネタをぶつけてみたところまずまず好評を得て、今回も同じ内容でとのオーダーだったが、思い切って新ネタをかけてみることにした。
題材は宮武外骨と蛙男商会。
宮武外骨とは、明治時代に活躍したジャーナリスト・雑誌編集者で、反権力を貫きながらもネット時代の現代からみてもぶっ飛んだ、ポップアートのような斬新な雑誌づくりで知られ、40歳代以上のメディア好きの中ではファンも多い。
以前書いたコラム(PDF)をどうぞ。
蛙男商会は今更説明もいらないかと思うが『秘密結社鷹の爪』など次々に傑作を生み出すFlashアニメクリエイター。
この二人の表現を並べてみることで風刺・批評・広告・メディアについて考えてみようというのが今回の趣旨。
前半30分は宮武外骨『滑稽新聞』のクリエイティブを紹介。といってもその内容のほとんどは赤瀬川原平『学術小説 外骨という男がいた!』をベースにしたもの。
この本、便利なことに赤瀬川原平が美学校で外骨について講義をしているという設定なので、そのままを朗読すればいい。
ま、それじゃあまりに丸パクリなので、昔からコレクションしていた現物の滑稽新聞なども見せながら自分の解釈を入れて喋ったけど、『滑稽新聞』のもつ表現の過激な面白さのおいしい部分は、ほとんどこの『学術小説 外骨という男がいた!』で紹介されてしまっているので、ネタがかぶるのはしょうがない。
政府を叩き、企業を叩き、読者まで叩き、叩き方に工夫しすぎて現代美術のレベルにまで達してしまった『滑稽新聞』のさまざまな事例を見せていくと、学生たちの目が釘付けになっているのがわかる。
続いて、こうした手法は現代では2ちゃんねるの中でよく見かけるという話をして、その中からFlashアニメ文化を持ち出して、さらに蛙男商会の話に繋げていく。
風刺ということで『独立愚連広報部』から「社保庁」「自民党」を上映。これが大受け。
ここで「広告と報道・広告と表現の対立」記事にしか見えない記事広告やこそこそしたプロダクトプレイスメントの問題を出した上で『秘密結社 鷹の爪』のサントリーCM「非提供」の事例や、
映画『秘密結社鷹の爪 THE MOVIE』で使用されている「バジェットゲージ」を紹介し、さらにどかんと受けた後で、また『滑稽新聞』に戻してパロディ広告の事例を見てもらって、その共通点を確認してもらった。
「風刺的な表現はビジネスになりにくいと思われているところがあるけど、やり方次第でまだまだ可能性がある。
そして風刺は単に権力を批判するものではなく、あまりにも常識に依存している僕ら自身の日常的怠惰を撃つものなのだ」とまとめた。
まあ、なんというか強引な展開だけど、とにかく面白いものに触れてほしかっただけなのであって、ほんとは。
だから一番の不安は「面白がってくれるかなあ」ということだったんだけど。
学生から寄せられたアンケートを見て絶句。
なんと絶賛の嵐。
もちろんその絶賛は外骨とFROGMANに向けられているわけだけど、それで十分どころか、目的は完全達成と結論。
中にはハイレッド・センターの話を取り上げたり(赤瀬川原平氏だからね)、日本ブレイク工業の事例を呈示したり(蛙男紹介作品の音楽担当はmanzoなので、とても正しい)、この二つを似ているというのは危険なのではという指摘もあったり(ある意味正しい。講義の中でもジャーナリストとアニメ制作者という立場の違いに触れた。しかし反対側の登山口から同じ頂上まで上ってしまったような二人なのだと僕は解釈している)とにかくどれもとても鋭い。頼もしい。後生畏るるべし。
僕はといえば、外骨と出会ったのがちょうど今回聴講してくれた学生たちと同じくらいの歳で、そのインパクトを20年以上ずっと引きずり続けている男なわけです。
ささやかながらバトンを一つ後続に渡すことができたような気がして、とても感慨深い。もう本当に嬉しかった。
と、同時に150人以上の優秀な学生が、ひとりも宮武外骨を知らなかったという事実には憂慮せざるを得ない。もっとちゃんとした先生が教えるべきだと思うけどなあ。どの授業で取り扱うべきか、難しいところだけど。
後から知ったのだが、ちょうど朝日新聞夕刊がこの週に外骨特集を組んだ。気になって図書館でコピーしてきたんだけど、外骨そのものの記述は悪くないけど、岡留安則や佐高信と並べるのはどうか。彼らはしつこく罵詈雑言を並べてきたけど外骨のような芸はなかったと思うよ。蛙男商会と並べた俺の方がうまいぜというのは、まあ実にささやかな自己満足で、あまりかっこよくないけど。
というわけで伊藤先生と早稲田大学文化構想学部の学生さん、ありがとうございました。
宮武外骨とは、明治時代に活躍したジャーナリスト・雑誌編集者で、反権力を貫きながらもネット時代の現代からみてもぶっ飛んだ、ポップアートのような斬新な雑誌づくりで知られ、40歳代以上のメディア好きの中ではファンも多い。
以前書いたコラム(PDF)をどうぞ。
蛙男商会は今更説明もいらないかと思うが『秘密結社鷹の爪』など次々に傑作を生み出すFlashアニメクリエイター。
この二人の表現を並べてみることで風刺・批評・広告・メディアについて考えてみようというのが今回の趣旨。
前半30分は宮武外骨『滑稽新聞』のクリエイティブを紹介。といってもその内容のほとんどは赤瀬川原平『学術小説 外骨という男がいた!』をベースにしたもの。
![]() | 赤瀬川 原平¥ 840 Amazonで詳細を見る by AmaGrea![]() |
この本、便利なことに赤瀬川原平が美学校で外骨について講義をしているという設定なので、そのままを朗読すればいい。
ま、それじゃあまりに丸パクリなので、昔からコレクションしていた現物の滑稽新聞なども見せながら自分の解釈を入れて喋ったけど、『滑稽新聞』のもつ表現の過激な面白さのおいしい部分は、ほとんどこの『学術小説 外骨という男がいた!』で紹介されてしまっているので、ネタがかぶるのはしょうがない。
政府を叩き、企業を叩き、読者まで叩き、叩き方に工夫しすぎて現代美術のレベルにまで達してしまった『滑稽新聞』のさまざまな事例を見せていくと、学生たちの目が釘付けになっているのがわかる。
続いて、こうした手法は現代では2ちゃんねるの中でよく見かけるという話をして、その中からFlashアニメ文化を持ち出して、さらに蛙男商会の話に繋げていく。
風刺ということで『独立愚連広報部』から「社保庁」「自民党」を上映。これが大受け。
![]() | FROGMAN¥ 999 Amazonで詳細を見る by AmaGrea![]() |
ここで「広告と報道・広告と表現の対立」記事にしか見えない記事広告やこそこそしたプロダクトプレイスメントの問題を出した上で『秘密結社 鷹の爪』のサントリーCM「非提供」の事例や、
映画『秘密結社鷹の爪 THE MOVIE』で使用されている「バジェットゲージ」を紹介し、さらにどかんと受けた後で、また『滑稽新聞』に戻してパロディ広告の事例を見てもらって、その共通点を確認してもらった。
「風刺的な表現はビジネスになりにくいと思われているところがあるけど、やり方次第でまだまだ可能性がある。
そして風刺は単に権力を批判するものではなく、あまりにも常識に依存している僕ら自身の日常的怠惰を撃つものなのだ」とまとめた。
まあ、なんというか強引な展開だけど、とにかく面白いものに触れてほしかっただけなのであって、ほんとは。
だから一番の不安は「面白がってくれるかなあ」ということだったんだけど。
学生から寄せられたアンケートを見て絶句。
なんと絶賛の嵐。
もちろんその絶賛は外骨とFROGMANに向けられているわけだけど、それで十分どころか、目的は完全達成と結論。
中にはハイレッド・センターの話を取り上げたり(赤瀬川原平氏だからね)、日本ブレイク工業の事例を呈示したり(蛙男紹介作品の音楽担当はmanzoなので、とても正しい)、この二つを似ているというのは危険なのではという指摘もあったり(ある意味正しい。講義の中でもジャーナリストとアニメ制作者という立場の違いに触れた。しかし反対側の登山口から同じ頂上まで上ってしまったような二人なのだと僕は解釈している)とにかくどれもとても鋭い。頼もしい。後生畏るるべし。
僕はといえば、外骨と出会ったのがちょうど今回聴講してくれた学生たちと同じくらいの歳で、そのインパクトを20年以上ずっと引きずり続けている男なわけです。
ささやかながらバトンを一つ後続に渡すことができたような気がして、とても感慨深い。もう本当に嬉しかった。
と、同時に150人以上の優秀な学生が、ひとりも宮武外骨を知らなかったという事実には憂慮せざるを得ない。もっとちゃんとした先生が教えるべきだと思うけどなあ。どの授業で取り扱うべきか、難しいところだけど。
後から知ったのだが、ちょうど朝日新聞夕刊がこの週に外骨特集を組んだ。気になって図書館でコピーしてきたんだけど、外骨そのものの記述は悪くないけど、岡留安則や佐高信と並べるのはどうか。彼らはしつこく罵詈雑言を並べてきたけど外骨のような芸はなかったと思うよ。蛙男商会と並べた俺の方がうまいぜというのは、まあ実にささやかな自己満足で、あまりかっこよくないけど。
というわけで伊藤先生と早稲田大学文化構想学部の学生さん、ありがとうございました。
昨年のカーリングといい、本当に面白い、興味深い授業でした!講義の進め方も普段授業を受け持っていない方だとはとても思えませんでした。有難うございました。RT @shike: 早稲田の授業。大好評が嬉しい反面、この優秀な学生たちにもっとちゃんとした人が宮武外骨のことを教えてあげ
ありがとうございます。本当は外骨だけで一年は講義できるネタがあるので関連書籍是非当たってみて下さい。蛙男もDVD を是非。 QT @unemitatsuya: 昨年のカーリングといい、本当に面白い興味深い授業でした!講義の進め方も普段授業を受け持っていない方だとはとても思えません
@shike はい、大学に何冊か置いてあったので読んでみたいと思います。蛙男は帰りに借りてきました(笑)