2009年05月24日
「第3回緊急 日垣塾」秘密と報道
ジャーナリスト日垣隆氏の主催する企画「第3回緊急 日垣塾」に行ってきた。メールマガジン読者限定の企画で、テーマは「秘密と報道」
ざっくりメモったものを公開しておく。
僕の聴き違い思い違いなどがかなり含まれている可能性もあるということを十分踏まえていただきたく。
■はじめに
●絶対的な秘密は存在しない
相対的なもの。知ってる人と知っていない人がいる。
鴻池官房長官 税金の無駄遣いと叩かれる 新聞から
1-2万の新幹線代 50億使える人なのにね。せこい。
こういう話は記事書きやすいでしょうね。
なんでもてるんだろう。あの歳で、立派だなあ。
そういう話が出てこない。
明治時代に萬朝報では蓄妾の実例と称して有名人のお妾さんについて一面でガンガン書いた。
やがて日清戦争で新聞の部数はどんどん増えていく。
この時代においては蓄妾問題は新聞の大きな仕事だった。
いまはこういう記事は出ない。
週刊誌が書く すみわけがある。 代わりに爆笑問題田中結婚とか むかしは記事にならなかった話題も記事になるようになった。
カフカの「変身」芋虫になっても家族は驚かない。読者は驚く。実存文学の代表作。実際はテーマに行き詰まって一日で書いたらしい。
恐怖の誕生パーティという怖い小説。夫の誕生パーティの招待状を過去の勤め先に送るが実は在籍していなかったことがわかる。秘密がばれてしまった。
●取材、これはまずいだろ
だれでもできるようなことを聞いてもしょうがない。ここでしか聞けないものを拾うべきなのに。
●政治家と付き合う女性
最後まで黙っている人と途中でばらしちゃう人の違いはなんだろう。
■情報ソース
●山崎豊子 サンダカン八番娼館執筆時に 天草で取材したとき「決意を固めた」
「取材先、元からゆきさんの写真とパスポートを盗もうとした。」
「盗んだ。元からゆきさんがその場で気がついた」
なんで盗んだんだろう。何で元からゆきさんは訴えなかったんだろう。なんでそのことを山崎さんはあとがきにわざわざ書いたんだろう。やってることは犯罪なのに。
●佐木隆三『復習するは我にあり』
元警察官と雑談。200ページの部内資料を見せてくれた。もの凄く欲しくなった。貸してと頼んで、全部コピーして返した。当時は高価なものなのでまさかと思っただろう。
なんで丸秘文書が退職した元警察官の家にあっていいのか。守秘義務は当然ある。
佐木さんも取材手法の問題とは考えず、たんに思い出として語っている。こんな取材手法は現在許されるだろうか。
裁判官制度 7/21くらいに た分もの凄くわかりやすい簡単な裁判が第一号になる。
「今日からスタート」という5/21朝刊の記事はまるで広報みたいな記事だった。
裁判官には守秘義務なく 裁判員の側にはある。バカみたい。
役所の審議会なども守秘義務契約がありサインさせられる。ところがテレビカメラが入ることがある。どこに守秘があるのか。
自分はサイン拒否したことがあった。どんな秘密があるんだと聞いたら「どういうのでしょうね」実はたいした秘密なんかない。
●朝日盗聴取材事件
昭和57年の朝日新聞談合キャンペーン
朝日新聞社史に 戦後わが社は談合を崩したと書いてある。
昭和56年2月 安藤博記者は盗聴器を仕掛けていた
(東京のホテルニューオータニで開かれた大手建設会社首脳の会合を探ろうと、会場のテーブルに盗聴器(ワイヤレスマイク)を仕掛けた。)
取材手法としてどうなのか。
●鎌田慧『自動車絶望工場』
あの取材手法はフェアかどうか トヨタに潜入して給料貰って。退職したあと元同僚に取材に行くときにも自分がライターとはいえなかった。
トヨタの労働者としても守秘義務があるはず。取材ソースである元仲間にも本を書くことも伝えず、書きあがっても本を贈っていない。こういったことがなかなか問題にならない。
たた賞の受賞審査では一応問題にはなっていた。
●名誉毀損
上智大学で週刊誌のジャーナリズムを考えるシンポジウムがあった
主だった編集長・元編集長が集まった。新潮がこなかったのは事件当事者だから
サンデー毎日が来なかったのは電車賃がなかったから(笑)これは名誉毀損だ。でも訴えたらみっともないですよね。
名誉毀損は訴えるだけで損ということもある。
僕自身内容証明も貰ったし訴えるといわれた「どうぞ」というと訴えてこない。しかしいまは警告もなく訴えてくる。そういうケースが増えている。名誉毀損の高額化
外務省や警察に秘密があるのはしょうがない。しかし米国では全て終わったら公開される。ここが違う。
●毎日新聞西山事件
毎日新聞内で西山事件はいまほとんど論じられることはない。外務省機密漏えい事件。
むかしは警察署内のロッカーに身を隠して取材する新聞記者が当たり前にいた。
昭和49年の西山事件 審議官の秘書のような仕事をやっていた事務官で人妻の蓮見喜久子さんを口説いて不倫関係に持ち込んで機密を持ち出してスクープを書いた。蓮見喜久子さんの手記は週刊新潮に載った。西山氏に以下に口説かれたか、肉体関係を結んだか暴露された。
このての全ての手記にいえることだが、ウラを取るのは大変。ホテルに行ったことは新潮がウラ取っていたようだ。しかしウラ取りの段階で記者がだまされることもよくある。
サンデー毎日 全盛期155万部 現在公称7万部 これに耐えているのは凄い。
(手に持っている)これは創刊五十周年号で坂本氏という元記者が自慢している。ひとつは「放送」という言葉は自分が作った、もうひとつはクロスワードという言葉を初めて出した。しかしこれウラ取れない。サンデー毎日内部でもクロスワードを初めて出した人が三人いる。多分誰も嘘ついていない。記憶の定着に問題があるだけ。
まあただし自称剣道二段はひどいよね。でも長い間誰もウラとってなかったわけで。
まあとにかく大事実がおかしければやばいが、細かいことはウラ取りきれないことはある。
蓮見手記には「生理だから」といったのに西山氏が「構わない」と言ったとまで書いてある。そのうち西山がさめてきたような気がしたので自分から「京王プラザホテルに行きたい」というと拒絶されて、この人は本気じゃないなと思った。とまで書いてある。
そのうち「機密書類を持ってきてくれ」と頼まれて、審議官が見る前の書類を持ち出して沖縄密約スクープされる。後に国会で問題になり、ソースか確定されて事件になった。
実は蓮見さんは審議官ともできていたという話があり、本人は否定しているが、週に2回手紙貰っていたと告白している。なんだか恋文のような手紙で、うーん。
●なぜ騙されたか週刊新潮
今回週刊新潮はだまされて朝日新聞赤報隊事件の手記を載せた。
なぜ騙されたか編集長の謝罪と説明記事を書いたら朝日の社説が叩いた。しかし残念ながら朝日の社説はつまんなくて新潮の記事は面白い。
このシリーズ、四回も手記を載せてしまったのだが、一回目を見たときにすでにやばいと思った。そもそもなんで「気がつかない」のか問題にしたい。
●宮崎勤事件
人格障害は責任能力あり、精神疾患なら39条で責任能力なし、その間に精神 もある。鑑定書は三パターンに分かれて、責任能力ありと裁判所は判断した。
麻原も責任能力ありとされた。
精神障害の一種として相手を喜ばせるためのどんどんウソをつくという障害がある。週刊新潮で手記を載せちゃった人はまさにこれ。空想虚言。虚言癖。相手が質問してつめていくとどんどん修正していく。別に騙すつもりはなく楽しませたい楽しみたい。
4/23号「私たちはこうして騙された」という記事。どうなんだろ。謝罪するよりこっちのほうが売れるんでしょうな。まあ多くの人が騙された。勝谷さんもこのシリーズ第一回が出るときに「明日の週刊新潮に大スクープ」と言っていた。
オウム坂本一家事件のときも犯人として週刊文春に名乗り出た人がいた。文春も江川しょうこさんも騙されそうになった。手記を載せた号がでる直前にデスクが止めた。実はすでに120万部刷っていたので大損だったが止めた。実際は虚言だった。
これに対して新潮は四回もウソ手記を載せてしまった。この差はなにか。ひとつは虚言癖がある人がいるということを知っているかどうかという視点があるかどうかだ。カネや名誉・信条のためでなく、ただウソつきたい人というのがいるのだ。
手記を載せるに当たっては犯人を部屋に缶詰にしてゆっくり取材しようとする。これが犯人だったら犯人隠匿罪。あと広告を打つタイミング。全て綱渡り。このあたりが誤報手記につながる。
そして部数が減ってお金はない。スタッフ少ない。しかも訴訟起こされる。週刊誌は大変だ。新聞がかけないことを書く、時々間違えるというのは暗黙の了解だったのに。もともと売れていないことを前提にしている週刊金曜日編集長はイベントでも元気だったらしい。
質問 噂の真相をどう評価するか。
答え 販売収入自体で黒字で終えた数少ない雑誌。あとFACTAとか会員誌がある。実は新聞記者がアルバイトで記事書いている。こういう雑誌も意外と経営が成り立っている。噂の真相は自前で書いていたけど、みんなチクってくるので記事が書けた。チクり先になっていた。チクられた方はたまらない。また必ず本人取材をした。これはよかった。質の低い記事が多く、特に文章を書く人を叩きすぎるので、なくなって欲しいと思っていたのだがなくなってしまうのは社会が不健全な感じがする。
質問 週刊文春はどうして120万部刷ったのにスクープをとめることができたのか、花田氏はトップで止めたのはデスクとの話だが。
答え 新春合併特大号で締め切りまで倍の時間があった。明確にウラを取れたわけではなく、明らかな食い違いがあり虚言の可能性が否定できなかったので止めたらしい。証拠不十分ということ。
また犯人隠匿罪にならないように、神奈川県警にどの段階で通報するかという問題もあった。週刊誌と警察にはルートがある。調整していたのではないか。
知らないことは証明しようがない。犯人しか知りえないことを知っていると言っても本当かどうか分からない。
新潮は誰も疑わなかった。
自白においても、やっていない人が喋っちゃうことがある。足利事件もそもそもあの場で犯行起こすことがすでにムリ。でも容疑者は喋っちゃう。取調べがひどいのか、取調べに迎合するのか。
■後半
●週刊誌の危機
週刊誌が消えていくことについて考える集会がいくつかあった。参加者はなんか楽しそうだった。どこまで本気なのか。権力が弾圧したという話も多かったが、寿命が尽きたとか販売努力が足らないとかというはなしと取り違えないほうがいいと思う。アサヒ芸能が残っているのは権力が支えいているのか?
モーニング・ツーがネットで全ページ無料公開。これはどうなんだろうな。自分としては紙が手放せないが、この先を考えたらこれでいい人も多いだろう。
皆さんに聞きたい。週刊誌月刊誌なくなることはまずいことなのか。
どんなものでも必ず終わりは来る。企業は三十年、財閥100年。いつかなくなるもの、とも考えられる。
ところでフランスはなぜか要人スキャンダルが騒がれない。ジスカールデスタンとか。だいたい異性スキャンダルはほとんど結婚しているから成立する。離婚しちゃえばいいと言ったひとがいる。離婚したら報じられなくなった人もいる。あと公金使い込むとか。そういうルールがある。
ヘアヌード解禁についても実は20ページまでというルールがあり21ページ目からは逮捕されるんだそうだ。こういうルールは外から分からない。
●草薙厚子問題
もと少年院の教務官 自分の家に放火して家族を殺した少年事件の精神鑑定書を見せてもらうことに成功。同行のカメラマンを部屋から追い出して、悪用しませんと宣言した上で、全部複写して本にしてしまった。
『僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実 』鑑定書そのまま記事にしている。鑑定書のほうが文章がうまくて、草薙さん下手。
あと精神鑑定書にも著作権がある。数十万の報酬が発生する。あとで本にまとめられて売られることもある。こういう本をいっぱい持っている。鑑定した医師が本にまとめている。読んでいるとこんなの本にしていいのかなという気もするが、これで真相に迫れるという面ももちろんある。いずれにしても著作権がある。しかしルールとして周知されていない。
精神鑑定書はアカデミックに扱えば書籍になるということらしい。じゃあジャーナリスティックではまずいのか。
草薙は情報源秘匿ができなかった。裁判所・検事がだすわけがないので弁護側か鑑定人本人しかルートがない。というわけで特定されてしまう。秘匿しても意味がない。鑑定人本人も見せたと言っている。なのに草薙は秘匿を貫く。なんなんだ。
医師も鑑定して治療の必要ありと判断するのであればすぐに治療しないといけない。医者は病人を診れば早く治したい診てあげたいと思うはず。アスペルガーについてもこれを広げたいという意思が働く。この症状があればこの犯罪はセーフだというのは、この症状をもつひとはこの犯罪を犯すと特定するのと同じ。で、『僕はパパを殺すことに決めた』というタイトルに医師は絶句したらしい。要するに鑑定書を渡す相手を間違えたということだ。まさかジャーナリストと名乗る人が丸ごと写すとは。
『日本の精神鑑定』という本で福島章は、精神鑑定を書籍にすることについては「違法性はないであろう」としている。つまり確定していない。学術に利用するということで暗黙の了解でやってきたこと。草薙はこれを無視した。
草薙の書籍を全部読んだ。悪いけど下手だ。キャスターになりたかった人なんだろう。『少年A全記録』に「一部の職員から受けたハラスメントで教官をやめた。いまでも法務省に対する憎しみが蘇ってくる。」
前職に対する恨みを明確に打ち出している人が冷静にこの問題を書けるのだろうか。
フェアでない気がする。で、文芸家協会などはすぐ草薙支持出す。協会で2千人以上いるのに。これでは草薙は付け上がる。
『大統領の陰謀』情報源はFBI副長官、ワシントンポストはこれを守り通す。これがミスだったらワシントンポストはつぶれかねない。でも行く。情報源は守る。ディープスロート情報は妻も知っていた。いいのかな。ともかく情報源は33年間守られたわけで。家族も偉い。副長官は33年後に告白したが、その後ボブ・ウッドワードはFBI副長官は内部でどうやって自分の身を守ったのかを取材して暴露している。FBI内部で相当な工作が行われていた。情報を漏らせる人は限られているので当然嫌疑はかかる。相当なことをしていた。
これをボブは書く。ここで萎縮しないのがさすが。
■質疑
質問 自動車絶望工場 鎌田氏はかつての同僚にも嘘をついたというが。取材はどこからフェアか。
日垣 あなたはどうおもう。質問者 うまくいえない。
日垣 僕も今日紹介した事例について明確な答えを出し切っていない。ケースごとに違っている。佐木隆三は復讐するは我にありで世に出た人。ああいう形で出よかったのか。山崎豊子さん取材先で写真とむかしのパスポートを盗んでしまったことを、あとがきで懺悔している。自分でも何度も悩んでいる。
ただ取材した内容の公表の仕方に納得行かないケースがある。あとは相手がそのあとどう困るのかというのも考えるべきか。それと取材先に著作を送らないというのはなめている。
自動車絶望工場という仕事はずっと尊敬してきたが、ずっと考えているうちにフェアじゃない。自分はやらないと思った。
自分の問題で考えると。雇った人が最初から取材目的だったら許しがたい。そうではなく仕事しているうちに不満がたまって書くのであれば、それは不徳のいたすところかな。
ただやらないとやるべきでないは違う。またフェアであり続けるというのも偽善っぽい。
質問 アマとプロの違いは
取材費。特に週刊誌は潤沢に使ってきた。新聞は取材先への謝礼は全くださない。
半面アウトプットについてはネットでずいぶん安くなった。媒体の問題はいまやプロアマの違いに影響しなくなりつつある。
質問 編集者の仕事について
日垣 まさにアマとプロの違いは編集者がいるかどうか。名誉毀損にならないように怪しいところがあったらちゃんと指摘するのが編集者の役目だが、これも難しい。ライターのほうが大御所だったりする。また検証できる間違いとそうでない間違いがあるので編集者がいくら頑張っても限界ある。
日垣 前から考えているのだが、これからノンフィクションは成立するのか。ネットで当事者がローコストで情報を流せばいいという話がある。ジャーナリストは当事者の代弁者だったわけで。当事者が自分で発信できるようになったのはいいことだがメディアは辛い。
イラク戦争のときにネットで寄付を募って取材に行ったライターがいた。現地取材して原稿が売れたらお金返すのだそうだ。日本ではネット決済の問題がありなかなかうまくいかない。
藤井さんどうですか、今後のノンフィクションは。
会場にいた藤井誠二氏
ただ当事者が言うことが正しいとは限らないし、整理したり掘り下げたり矛盾しているところを正したりする必要がある。ノンフィクションライターの役割はあるのでは。
日垣 その通りだけど、当事者が間違えるのと同じだけライターが間違える可能性もあるわけで。
日垣 名誉毀損問題について。公明党がこの件に非常に熱心で、賠償金の桁が二つ上がった。これは確かだけど、一方でそれまでがひどすぎたという面も否定できない。捏造記事で当事者や家族が立ち直れないようなダメージを与えておいて数十万というのはどうか。
週刊誌編集長イベントでも国家弾圧だという話で団結していたようだが、よくよく聞いてみると「出版社社長を訴えるのはおかしい」「ライターを訴えるのはおかしい」と主張がばらばらだった。
●絶対的な秘密は存在しない
相対的なもの。知ってる人と知っていない人がいる。
鴻池官房長官 税金の無駄遣いと叩かれる 新聞から
1-2万の新幹線代 50億使える人なのにね。せこい。
こういう話は記事書きやすいでしょうね。
なんでもてるんだろう。あの歳で、立派だなあ。
そういう話が出てこない。
明治時代に萬朝報では蓄妾の実例と称して有名人のお妾さんについて一面でガンガン書いた。
やがて日清戦争で新聞の部数はどんどん増えていく。
この時代においては蓄妾問題は新聞の大きな仕事だった。
いまはこういう記事は出ない。
週刊誌が書く すみわけがある。 代わりに爆笑問題田中結婚とか むかしは記事にならなかった話題も記事になるようになった。
カフカの「変身」芋虫になっても家族は驚かない。読者は驚く。実存文学の代表作。実際はテーマに行き詰まって一日で書いたらしい。
恐怖の誕生パーティという怖い小説。夫の誕生パーティの招待状を過去の勤め先に送るが実は在籍していなかったことがわかる。秘密がばれてしまった。
●取材、これはまずいだろ
だれでもできるようなことを聞いてもしょうがない。ここでしか聞けないものを拾うべきなのに。
●政治家と付き合う女性
最後まで黙っている人と途中でばらしちゃう人の違いはなんだろう。
■情報ソース
●山崎豊子 サンダカン八番娼館執筆時に 天草で取材したとき「決意を固めた」
「取材先、元からゆきさんの写真とパスポートを盗もうとした。」
「盗んだ。元からゆきさんがその場で気がついた」
なんで盗んだんだろう。何で元からゆきさんは訴えなかったんだろう。なんでそのことを山崎さんはあとがきにわざわざ書いたんだろう。やってることは犯罪なのに。
●佐木隆三『復習するは我にあり』
元警察官と雑談。200ページの部内資料を見せてくれた。もの凄く欲しくなった。貸してと頼んで、全部コピーして返した。当時は高価なものなのでまさかと思っただろう。
なんで丸秘文書が退職した元警察官の家にあっていいのか。守秘義務は当然ある。
佐木さんも取材手法の問題とは考えず、たんに思い出として語っている。こんな取材手法は現在許されるだろうか。
裁判官制度 7/21くらいに た分もの凄くわかりやすい簡単な裁判が第一号になる。
「今日からスタート」という5/21朝刊の記事はまるで広報みたいな記事だった。
裁判官には守秘義務なく 裁判員の側にはある。バカみたい。
役所の審議会なども守秘義務契約がありサインさせられる。ところがテレビカメラが入ることがある。どこに守秘があるのか。
自分はサイン拒否したことがあった。どんな秘密があるんだと聞いたら「どういうのでしょうね」実はたいした秘密なんかない。
●朝日盗聴取材事件
昭和57年の朝日新聞談合キャンペーン
朝日新聞社史に 戦後わが社は談合を崩したと書いてある。
昭和56年2月 安藤博記者は盗聴器を仕掛けていた
(東京のホテルニューオータニで開かれた大手建設会社首脳の会合を探ろうと、会場のテーブルに盗聴器(ワイヤレスマイク)を仕掛けた。)
取材手法としてどうなのか。
●鎌田慧『自動車絶望工場』
あの取材手法はフェアかどうか トヨタに潜入して給料貰って。退職したあと元同僚に取材に行くときにも自分がライターとはいえなかった。
トヨタの労働者としても守秘義務があるはず。取材ソースである元仲間にも本を書くことも伝えず、書きあがっても本を贈っていない。こういったことがなかなか問題にならない。
たた賞の受賞審査では一応問題にはなっていた。
●名誉毀損
上智大学で週刊誌のジャーナリズムを考えるシンポジウムがあった
主だった編集長・元編集長が集まった。新潮がこなかったのは事件当事者だから
サンデー毎日が来なかったのは電車賃がなかったから(笑)これは名誉毀損だ。でも訴えたらみっともないですよね。
名誉毀損は訴えるだけで損ということもある。
僕自身内容証明も貰ったし訴えるといわれた「どうぞ」というと訴えてこない。しかしいまは警告もなく訴えてくる。そういうケースが増えている。名誉毀損の高額化
外務省や警察に秘密があるのはしょうがない。しかし米国では全て終わったら公開される。ここが違う。
●毎日新聞西山事件
毎日新聞内で西山事件はいまほとんど論じられることはない。外務省機密漏えい事件。
むかしは警察署内のロッカーに身を隠して取材する新聞記者が当たり前にいた。
昭和49年の西山事件 審議官の秘書のような仕事をやっていた事務官で人妻の蓮見喜久子さんを口説いて不倫関係に持ち込んで機密を持ち出してスクープを書いた。蓮見喜久子さんの手記は週刊新潮に載った。西山氏に以下に口説かれたか、肉体関係を結んだか暴露された。
このての全ての手記にいえることだが、ウラを取るのは大変。ホテルに行ったことは新潮がウラ取っていたようだ。しかしウラ取りの段階で記者がだまされることもよくある。
サンデー毎日 全盛期155万部 現在公称7万部 これに耐えているのは凄い。
(手に持っている)これは創刊五十周年号で坂本氏という元記者が自慢している。ひとつは「放送」という言葉は自分が作った、もうひとつはクロスワードという言葉を初めて出した。しかしこれウラ取れない。サンデー毎日内部でもクロスワードを初めて出した人が三人いる。多分誰も嘘ついていない。記憶の定着に問題があるだけ。
まあただし自称剣道二段はひどいよね。でも長い間誰もウラとってなかったわけで。
まあとにかく大事実がおかしければやばいが、細かいことはウラ取りきれないことはある。
蓮見手記には「生理だから」といったのに西山氏が「構わない」と言ったとまで書いてある。そのうち西山がさめてきたような気がしたので自分から「京王プラザホテルに行きたい」というと拒絶されて、この人は本気じゃないなと思った。とまで書いてある。
そのうち「機密書類を持ってきてくれ」と頼まれて、審議官が見る前の書類を持ち出して沖縄密約スクープされる。後に国会で問題になり、ソースか確定されて事件になった。
実は蓮見さんは審議官ともできていたという話があり、本人は否定しているが、週に2回手紙貰っていたと告白している。なんだか恋文のような手紙で、うーん。
●なぜ騙されたか週刊新潮
今回週刊新潮はだまされて朝日新聞赤報隊事件の手記を載せた。
なぜ騙されたか編集長の謝罪と説明記事を書いたら朝日の社説が叩いた。しかし残念ながら朝日の社説はつまんなくて新潮の記事は面白い。
このシリーズ、四回も手記を載せてしまったのだが、一回目を見たときにすでにやばいと思った。そもそもなんで「気がつかない」のか問題にしたい。
●宮崎勤事件
人格障害は責任能力あり、精神疾患なら39条で責任能力なし、その間に精神 もある。鑑定書は三パターンに分かれて、責任能力ありと裁判所は判断した。
麻原も責任能力ありとされた。
精神障害の一種として相手を喜ばせるためのどんどんウソをつくという障害がある。週刊新潮で手記を載せちゃった人はまさにこれ。空想虚言。虚言癖。相手が質問してつめていくとどんどん修正していく。別に騙すつもりはなく楽しませたい楽しみたい。
4/23号「私たちはこうして騙された」という記事。どうなんだろ。謝罪するよりこっちのほうが売れるんでしょうな。まあ多くの人が騙された。勝谷さんもこのシリーズ第一回が出るときに「明日の週刊新潮に大スクープ」と言っていた。
オウム坂本一家事件のときも犯人として週刊文春に名乗り出た人がいた。文春も江川しょうこさんも騙されそうになった。手記を載せた号がでる直前にデスクが止めた。実はすでに120万部刷っていたので大損だったが止めた。実際は虚言だった。
これに対して新潮は四回もウソ手記を載せてしまった。この差はなにか。ひとつは虚言癖がある人がいるということを知っているかどうかという視点があるかどうかだ。カネや名誉・信条のためでなく、ただウソつきたい人というのがいるのだ。
手記を載せるに当たっては犯人を部屋に缶詰にしてゆっくり取材しようとする。これが犯人だったら犯人隠匿罪。あと広告を打つタイミング。全て綱渡り。このあたりが誤報手記につながる。
そして部数が減ってお金はない。スタッフ少ない。しかも訴訟起こされる。週刊誌は大変だ。新聞がかけないことを書く、時々間違えるというのは暗黙の了解だったのに。もともと売れていないことを前提にしている週刊金曜日編集長はイベントでも元気だったらしい。
質問 噂の真相をどう評価するか。
答え 販売収入自体で黒字で終えた数少ない雑誌。あとFACTAとか会員誌がある。実は新聞記者がアルバイトで記事書いている。こういう雑誌も意外と経営が成り立っている。噂の真相は自前で書いていたけど、みんなチクってくるので記事が書けた。チクり先になっていた。チクられた方はたまらない。また必ず本人取材をした。これはよかった。質の低い記事が多く、特に文章を書く人を叩きすぎるので、なくなって欲しいと思っていたのだがなくなってしまうのは社会が不健全な感じがする。
質問 週刊文春はどうして120万部刷ったのにスクープをとめることができたのか、花田氏はトップで止めたのはデスクとの話だが。
答え 新春合併特大号で締め切りまで倍の時間があった。明確にウラを取れたわけではなく、明らかな食い違いがあり虚言の可能性が否定できなかったので止めたらしい。証拠不十分ということ。
また犯人隠匿罪にならないように、神奈川県警にどの段階で通報するかという問題もあった。週刊誌と警察にはルートがある。調整していたのではないか。
知らないことは証明しようがない。犯人しか知りえないことを知っていると言っても本当かどうか分からない。
新潮は誰も疑わなかった。
自白においても、やっていない人が喋っちゃうことがある。足利事件もそもそもあの場で犯行起こすことがすでにムリ。でも容疑者は喋っちゃう。取調べがひどいのか、取調べに迎合するのか。
■後半
●週刊誌の危機
週刊誌が消えていくことについて考える集会がいくつかあった。参加者はなんか楽しそうだった。どこまで本気なのか。権力が弾圧したという話も多かったが、寿命が尽きたとか販売努力が足らないとかというはなしと取り違えないほうがいいと思う。アサヒ芸能が残っているのは権力が支えいているのか?
モーニング・ツーがネットで全ページ無料公開。これはどうなんだろうな。自分としては紙が手放せないが、この先を考えたらこれでいい人も多いだろう。
皆さんに聞きたい。週刊誌月刊誌なくなることはまずいことなのか。
どんなものでも必ず終わりは来る。企業は三十年、財閥100年。いつかなくなるもの、とも考えられる。
ところでフランスはなぜか要人スキャンダルが騒がれない。ジスカールデスタンとか。だいたい異性スキャンダルはほとんど結婚しているから成立する。離婚しちゃえばいいと言ったひとがいる。離婚したら報じられなくなった人もいる。あと公金使い込むとか。そういうルールがある。
ヘアヌード解禁についても実は20ページまでというルールがあり21ページ目からは逮捕されるんだそうだ。こういうルールは外から分からない。
●草薙厚子問題
もと少年院の教務官 自分の家に放火して家族を殺した少年事件の精神鑑定書を見せてもらうことに成功。同行のカメラマンを部屋から追い出して、悪用しませんと宣言した上で、全部複写して本にしてしまった。
『僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実 』鑑定書そのまま記事にしている。鑑定書のほうが文章がうまくて、草薙さん下手。
あと精神鑑定書にも著作権がある。数十万の報酬が発生する。あとで本にまとめられて売られることもある。こういう本をいっぱい持っている。鑑定した医師が本にまとめている。読んでいるとこんなの本にしていいのかなという気もするが、これで真相に迫れるという面ももちろんある。いずれにしても著作権がある。しかしルールとして周知されていない。
精神鑑定書はアカデミックに扱えば書籍になるということらしい。じゃあジャーナリスティックではまずいのか。
草薙は情報源秘匿ができなかった。裁判所・検事がだすわけがないので弁護側か鑑定人本人しかルートがない。というわけで特定されてしまう。秘匿しても意味がない。鑑定人本人も見せたと言っている。なのに草薙は秘匿を貫く。なんなんだ。
医師も鑑定して治療の必要ありと判断するのであればすぐに治療しないといけない。医者は病人を診れば早く治したい診てあげたいと思うはず。アスペルガーについてもこれを広げたいという意思が働く。この症状があればこの犯罪はセーフだというのは、この症状をもつひとはこの犯罪を犯すと特定するのと同じ。で、『僕はパパを殺すことに決めた』というタイトルに医師は絶句したらしい。要するに鑑定書を渡す相手を間違えたということだ。まさかジャーナリストと名乗る人が丸ごと写すとは。
『日本の精神鑑定』という本で福島章は、精神鑑定を書籍にすることについては「違法性はないであろう」としている。つまり確定していない。学術に利用するということで暗黙の了解でやってきたこと。草薙はこれを無視した。
草薙の書籍を全部読んだ。悪いけど下手だ。キャスターになりたかった人なんだろう。『少年A全記録』に「一部の職員から受けたハラスメントで教官をやめた。いまでも法務省に対する憎しみが蘇ってくる。」
前職に対する恨みを明確に打ち出している人が冷静にこの問題を書けるのだろうか。
フェアでない気がする。で、文芸家協会などはすぐ草薙支持出す。協会で2千人以上いるのに。これでは草薙は付け上がる。
『大統領の陰謀』情報源はFBI副長官、ワシントンポストはこれを守り通す。これがミスだったらワシントンポストはつぶれかねない。でも行く。情報源は守る。ディープスロート情報は妻も知っていた。いいのかな。ともかく情報源は33年間守られたわけで。家族も偉い。副長官は33年後に告白したが、その後ボブ・ウッドワードはFBI副長官は内部でどうやって自分の身を守ったのかを取材して暴露している。FBI内部で相当な工作が行われていた。情報を漏らせる人は限られているので当然嫌疑はかかる。相当なことをしていた。
これをボブは書く。ここで萎縮しないのがさすが。
■質疑
質問 自動車絶望工場 鎌田氏はかつての同僚にも嘘をついたというが。取材はどこからフェアか。
日垣 あなたはどうおもう。質問者 うまくいえない。
日垣 僕も今日紹介した事例について明確な答えを出し切っていない。ケースごとに違っている。佐木隆三は復讐するは我にありで世に出た人。ああいう形で出よかったのか。山崎豊子さん取材先で写真とむかしのパスポートを盗んでしまったことを、あとがきで懺悔している。自分でも何度も悩んでいる。
ただ取材した内容の公表の仕方に納得行かないケースがある。あとは相手がそのあとどう困るのかというのも考えるべきか。それと取材先に著作を送らないというのはなめている。
自動車絶望工場という仕事はずっと尊敬してきたが、ずっと考えているうちにフェアじゃない。自分はやらないと思った。
自分の問題で考えると。雇った人が最初から取材目的だったら許しがたい。そうではなく仕事しているうちに不満がたまって書くのであれば、それは不徳のいたすところかな。
ただやらないとやるべきでないは違う。またフェアであり続けるというのも偽善っぽい。
質問 アマとプロの違いは
取材費。特に週刊誌は潤沢に使ってきた。新聞は取材先への謝礼は全くださない。
半面アウトプットについてはネットでずいぶん安くなった。媒体の問題はいまやプロアマの違いに影響しなくなりつつある。
質問 編集者の仕事について
日垣 まさにアマとプロの違いは編集者がいるかどうか。名誉毀損にならないように怪しいところがあったらちゃんと指摘するのが編集者の役目だが、これも難しい。ライターのほうが大御所だったりする。また検証できる間違いとそうでない間違いがあるので編集者がいくら頑張っても限界ある。
日垣 前から考えているのだが、これからノンフィクションは成立するのか。ネットで当事者がローコストで情報を流せばいいという話がある。ジャーナリストは当事者の代弁者だったわけで。当事者が自分で発信できるようになったのはいいことだがメディアは辛い。
イラク戦争のときにネットで寄付を募って取材に行ったライターがいた。現地取材して原稿が売れたらお金返すのだそうだ。日本ではネット決済の問題がありなかなかうまくいかない。
藤井さんどうですか、今後のノンフィクションは。
会場にいた藤井誠二氏
ただ当事者が言うことが正しいとは限らないし、整理したり掘り下げたり矛盾しているところを正したりする必要がある。ノンフィクションライターの役割はあるのでは。
日垣 その通りだけど、当事者が間違えるのと同じだけライターが間違える可能性もあるわけで。
日垣 名誉毀損問題について。公明党がこの件に非常に熱心で、賠償金の桁が二つ上がった。これは確かだけど、一方でそれまでがひどすぎたという面も否定できない。捏造記事で当事者や家族が立ち直れないようなダメージを与えておいて数十万というのはどうか。
週刊誌編集長イベントでも国家弾圧だという話で団結していたようだが、よくよく聞いてみると「出版社社長を訴えるのはおかしい」「ライターを訴えるのはおかしい」と主張がばらばらだった。