『シェアする落語』次回は7/7です。

2018年11月05日

「初めての寄席」ご案内に成功 新宿末廣亭10月上席(芸協)3日目昼の部(主任:圓馬) 2018/11/03


「『シェアする落語』をきっかけに落語に落語が好きになったけど、寄席に行ったことがないので行ってみたい」という方を新宿末廣亭にご案内。
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会場 : 新宿末廣亭

神田陽菜『巴御前』
三遊亭吉馬『浮世床(将棋)』
マグナム小林 バイオリン漫談
笑福亭和光『東の旅 見世物小屋』
春風亭昇乃進『深夜のタクシー』
一矢 相撲漫談
古今亭今輔『雑学刑事』
東生亭世楽『尿瓶』
国分健二 漫談
神田亜久鯉『柳沢昇進録 お歌合わせ』
桂歌蔵『熊の皮』
やなぎ南玉 江戸曲独楽
桂米丸『若返り』

仲入り

桂夏丸『懐かしのCMメドレー』
宮田陽・昇 漫才
桂小南『ん廻し』
春雨や雷蔵『たらちね』
翁家喜楽・喜乃 太神楽
三遊亭円馬『妾馬』
 
木戸銭3,000円




 

●神田陽菜『巴御前』

ネットに情報がない前座さん。神田陽子先生の弟子ではないかと。修羅場含めて頑張ってました。

●三遊亭吉馬『浮世床(将棋)』

本日の主任・三遊亭圓馬師の弟子である二ツ目。この日はリズムが今一つだったけど、今後楽しみな。


●マグナム小林 バイオリン漫談

いつ見ても安定の面白さ。同じネタを何度見てもこれだけ面白いんだから、初めて見た人は衝撃だろう。なんといっても暴れん坊将軍。お客さんの喜びようがすごい。

●笑福亭和光『東の旅 見世物小屋』

ここで上方落語が入ってくるのが芸協のいいところ。いんちき見世物に入っては騙される同じパターンで、どんどん笑いを積み上げていく。残り時間をネタにしながらギリギリまで笑いを取りに行くのは大したもの。

●春風亭昇乃進『深夜のタクシー』

芸協らしい若干ベタな新作を、ちゃんと面白くやってくれるあたりがいい。ユーミン歌いながらタクシーで中央道、ちょっとやってみたい。

●一矢 相撲漫談

相変わらずどう楽しんだらいいのか迷う微妙な芸。大坂なおみを「東京」と言い間違えるのはベタ過ぎる。相撲甚句ももうちょっと相撲寄りのやつにしてくれたらなあ。でも、物珍しさがあり、それはちょっと寄席っぽかったりする。

●古今亭今輔『雑学刑事』

この日の爆笑王。いやあ見事でした。
銀行強盗をクイズ攻めにする刑事の噺なんだけど、さすが落語界のクイズ王。機関銃のように次々に繰り出されるクイズ一つ一つのチョイスが素晴らしく、息継ぎする暇もないくらい連続で笑わしてくれた。「いい問題だ、覚えておけ」という無駄にハードボイルドな台詞がもう最高。

●東生亭世楽『尿瓶』

久しぶりに聴いたけど、こんなうまい人だったっけ。短い時間で新作の空気をがらりと江戸に。花を横に差すシーンの仕草が絶妙。

●国分健二 漫談

元B&B(島田洋七の二人目の相方)という予備知識しかなかったけど、いやあ面白い漫談。よくある大阪文化の小ネタを並べるだけでここまで笑いを取れるのはすごい技術。

●神田阿久鯉『柳沢昇進録 お歌合わせ』

笑い一色になっている客席の空気がまた一瞬で変わる。物語を楽しむ気持ちで、客がひとつにまとまってしまう。まだ二回しか聴いてないけど、本当に素晴らしい先生だと思う。もっともっと聴きたい。

●桂歌蔵『熊の皮』

客席のいい空気が少しも損なわれることなく、絶妙の軽さで。甚兵衛さんの「うけうけうけうけたま」は、だいたい誰がやっても面白いけど、この日の歌蔵師はまた格別で。

●やなぎ南玉 江戸曲独楽

独楽はもちろん素晴らしいけど、南玉師の言葉がとても美しい。真剣の芸を終えた後の笑顔がまたいい。

●桂米丸『わたしは誰』

93歳にして未だ高座に上がり続けるその意欲にまず頭が下がる。そしてしっかり面白い。ただやはり声が弱くなった。マイクの音量調整が難しくなった。
そこへきて、どこの客だがコンビニ袋をガサガサガサガサする音が耳障りでしょうがない。でもそんなことも初めて寄席体験には必要だったかもしれない。

仲入り


●桂夏丸『懐かしのCM』

クイツキ代演で新真打。ひょうひょうとCMソングを歌いまくることで客席を温めなおす。ミツワ石鹸が懐かしくて泣きそうになるね。

●宮田陽・昇 漫才

代演でこのコンビ。ラッキーである。練り上げられた台本があればもう何回聴いても面白いだけの芸がある。なかでも「手のひら日本地図」の鉄板ぶりがすごい。いま一番好きな漫才。

●桂小南『ん廻し』

出てきてネタに迷いながら「てのひら日本地図」をカヴァーして爆笑を誘う。ん廻しはちょっと珍しい型なのか、金看板銀看板半身なんとかは出てこない。実は声がちょっと苦手なのだが、このくらいの時間だと気持ちよく聞ける。

●春雨や雷蔵『たらちね』

定番のおばあさん小噺から、さらっとたらちね。ヒザ前らしい抑えた、客に負担をかけない高座の絶妙さ。

●翁家喜楽・喜乃 太神楽

ひょっとすると初めて見たかもしれない。はるか昔に見たかもしれない。お父さん輪っか落としてました。でもここに太神楽が入ることでトリの古典が引き立つ。

●三遊亭圓馬『妾馬』

この流れの締めくくりにこのネタを持ってきていただいたことの幸運さ。寄席初体験の締めくくりにぴったり、圓馬師の八五郎には適度な軽さで、泣かせるシーンも程よくじんわり涙が浮かぶ感じ。酒飲むシーンも絶品で、寄席フルコースのメインディッシュとして極上の高座。しかしそれは、小南師から始まるベテラン古典連続展開に太神楽という連係プレーがあってのものなんだろうな。


……というわけで「初心者にとって寄席の4時間半は長く、疲れるのではないか」という僕の仮説は、この日のプログラムの前にものの見事に吹っ飛んだ。三遊亭笑遊師が休みで聴けなかったのは残念だったけど、代演も含めて、いまどきの寄席の魅力をギュッと濃縮したような展開に、寄席初体験の知人も大満足。「いやー面白かった」「面白かった!」「こんなに面白いとは」「これはいかないと損ですね」と「面白い」を連発。いい寄席初体験をご案内できて、こちらも幸せ。

ここからはあくまで仮説ね。
この日の末廣亭がなんで面白かったかというと、
・今輔師の『雑学刑事』など、面白い新作が入っていた。
・講談も入っていた
・色物のバランスが良かった
・前半は新作中心、後半は古典中心のメリハリある展開で、結果としてトリの『妾馬』まで飽きることなく楽しむことができた。
ってことかなと。

まず、「面白い新作」が入ることで、初心者と落語との距離が縮まる。初心者向けには新作重要。
また、新作が入ると古典を掛ける演者にとってはネタ選びの自由度が上がってプラスになるかも。
さらに漫才や漫談のような「爆笑系」と、独楽や太神楽などの「お見事系」の二種類の色物、そして講談をうまく挟み込んでいくことで、初めてでも飽きることなく楽しめる長時間の寄席体験が実現できるのではないか。本当は浪曲も入れたい。

まあたぶん今でも、季節に応じてそういう意図の顔付けをすることはあるのだろう。ただパッケージにはなっていない。この日のような顔付けの芝居に、さらにちょっと長めの前説で「寄席の仕組み」についての解説をいれるなどの工夫を追加して「初めての寄席」というタイトルをつけて商品化してみるのはどうか。

「落語に興味あるけど、寄席には何となく入りにくい」と言って、ユーチューブばかり見ているなんて人は意外と多い。そこで初心者向けのパッケージを用意して、あまりにも高い「最初のハードル」を何とか超えさせてしまえば、寄席客、もっと増えるんじゃないかな。伸びしろはまだまだある。

ま、素人の浅知恵ですけど、そんなことを考えさせられた体験でありました。

m_shike at 00:23コメント(2)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント一覧

1. Posted by ますめっど   2018年11月11日 20:30
芸協さんの寄席はバラエティに富んでいて、いいですよね。色物も強いし、講談界が元気になったので幅が出てきた。
人気の人が居なくても、十分見られるようになってきた。
2. Posted by 4k   2018年11月14日 00:35
なんとなくパリーグと重なります。落語協会がセリーグってわけでもないですけど。
寄席の楽しさを楽しむなら芸協の芝居のほうがいいなと素直に思います。

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