2017年10月16日
『猫たちの色メガネ』(浅生鴨)
アマゾンに久しぶりにレビュー書きましたので、転載しておきます。
人間たちの世界は不安定だ。なぜなら、人間が世界を認識しているのは、あくまでコトバを通じて、だからだ。コトバにならないもののせいで、コトバは簡単にねじれてしまうので、つられて世界はねじれすぎて溶けてしまったり、あげくに崩壊してしまったりする。この短編集ではそんな人間世界の不安定に対して、「猫」が「絶妙な座標軸」として機能している。どの作品も、ある意味からっからに乾いたドライな世界なんだけど、そこに浮かび上がるのは、コトバでしか描けない人間たちの心情であり、なにか愛しいものが感じられるのだ。たぶん、猫のおかげなのだろう。猫にとっては、どうでもいいことなんだけどね。※献本いただきました、ありがとうございました。