2014年10月13日

松之丞の問題作・夢吉の堂々 新宿末廣亭深夜寄席 2014/10/11


神田連雀亭のあとなぜか休日出勤。帰宅するつもりがなんだか頭が疲れたので、新宿三丁目へ。
image
深夜寄席名物「最後尾の看板」の後ろを歩く。

今夜も満員、立ち見が出てました。
笑福亭竹三『秘伝書』
昔昔亭桃之助『銀婚旅行』
三笑亭夢吉『殿様団子』
神田松之丞『グレーゾーン』 



●笑福亭竹三『秘伝書』
まくらからつっかえつっかえだし、噺もときどき危なっかしい。でもそれなりに客を楽しませているのは口調がいいせいだろうか。これからの人。


●昔昔亭桃之助『銀婚旅行』
五十肩にまつわる話を軽妙に流していく漫談風味のまくらは楽しかったけど、噺の方は今一つリズムに乗り切れず。こういう「中途半端に古い昔の新作」はあまり好きじゃない。

「結婚25年目の夫婦が新婚当時と同じように部屋で全裸になって部屋の両端から走って来て抱き合おうとして、つまづいてすってんころりん両者はそれぞれ部屋の外へ」

無理あり過ぎでしょ。桃之助さんには大師匠・柳昇師の『結婚式風景』のリメイクをリクエストさせていただきます。


●三笑亭夢吉『殿様団子』
夢吉さんはこういう珍しいのやってくれるから楽しい。またうまいんだ。他の二ツ目がやってるの聴いたことあるけど、もう段違いに上手い。いつまで深夜寄席出演資格を与えておくのかと思ったら真打昇進決まったそうでおめでとうございます。


●神田松之丞『グレーゾーン』
現在DVD制作中で、この日も撮影クルーが入ってましたよ。

そこで出ました問題作。自作の新作講談です。


まずね、こういう本があるのだそうです。
流血の魔術 最強の演技 (講談社+α文庫)
ミスター 高橋
講談社
売り上げランキング: 93,991
2万試合をさばいたプロレスのレフェリーによるいわゆる暴露本。要はケーフェイ
プロレスはガチじゃない、台本あるんだとばらした本。
その後のプロレス人気低下、暗黒の10年を引き起こしたんだと。

あとで調べるとちゃんとWikipediaにも記述があって。

お笑い芸人の水道橋博士は本書について、「テレビにたとえるなら『笑点の大喜利の答えは全て事前に決まっている予定調和のショーです』と言っているようなもの。何とも身も蓋もない」と評している。

高橋は水道橋博士について、2002年2月に水道橋博士がパーソナリティーを務めるラジオ番組(TBSラジオ『社会の窓』)に出演したところ険しい表情で迎えられ、本書のことを快く思っていないことが容易に察せられたと回顧している

流血の魔術 最強の演技 - Wikipedia 

水道橋博士氏によるこの言及から松之丞さんからヒントを得たかどうかはともかく、これと同じフレームで、プロレスと笑点の「ガチ」をつないでみせた講談なのですよ。

新作のネタを割るのは嫌いなんだけど、ぎりぎりのところまで紹介してみる。

少年が二人。
プロレスファンの吉田君と、彼を敬愛する同級生の柿元君
暴露本のせいで仲間内での評価が急降下した吉田君は、「俺は大乃国になる」と、東京に行って落語家を目指す。

大乃国。

そう、松之丞さんはさらにもう一個突っ込む、相撲。 
中盆―私が見続けた国技・大相撲の“深奥”
板井 圭介
小学館
売り上げランキング: 79,071

大相撲八百長疑惑である。
弱い横綱と言われた大乃国は、八百長に手を染めず、千代の富士の連勝記録を止めてしまった。

信じていたプロレスは「ガチ」じゃなかった。
吉田君は「ガチ」を求めて「大乃国になる」と宣言して上京、落語家・瀧川鮒八(!)となり、やがて「本当は台本がある」笑点へと……。


ここまでかな。紹介の限界は。


さて。何を書くかな。


印象的だったのは大相撲八百長疑惑について触れたとき。

「DVDの撮影してるからって日和ってるのか?」
「俺は日和るよ!」

と、ほとんど自問自答の台詞が出てきたとき。

つまりここは「ガチ」じゃない。お約束がある。メタになっている。


飛躍するけど。
史実をもとにした虚構でありながら、虚構であることについては一切触れず「講釈師見てきたような」とばかりに客の頭の中に「歴史」を創り上げる、のが講談であるとすれば、講談における「ガチ」とは何か。講談はどこまでが講談なのか。

というようなことを言及している本作は「講談とは何かを語る"メタ講談"」。

……とも読める、かなと。

そうすると主役が吉田君→瀧川鮒八師、というのも判る。
モデルとなった瀧川鯉八さんは、「落語とは何か」について言及した傑作(と、僕は勝手に思っている)『暴れ牛奇譚』を創作した落語家だからだ。

……いや、たんに柿元さんこと小笑さんの物真似がしやすかっただけかもね。
小笑さんの物真似は、宮治さんもやります。ぼくもやります。

……とまあ、これ読んでも聴いてない人には何のことだかちっともわかりませんが、上手くいくと現在制作中のDVDに収録されるはずなので、出たら買いましょう。


松之丞さんの新作はいくつか聴いたことがあるが「講談であることの必然性」が今一つ感じられなかった。それだったら落語でやればいいのになって。

しかし本作は、あ、これは講談でなきゃだめだと思った。その理由はよく分からない。

まあともかく、非常に面白かったのでございますよ。まだまだいろんな解釈ができる奥の深さが嬉しい。また聴きたい。


というわけで、今夜も楽しい深夜寄席でございました。

※関連の記事
寄席日記 2014年10月11日(土) 新宿末広亭 深夜寄席 

m_shike at 12:00コメント(2)トラックバック(0)落語 | 生落語感想 

トラックバックURL

コメント一覧

1. Posted by ますめっど   2014年10月13日 12:55
松之丞さん、元々落語か講談かで迷った方らしい。
談志ファンだし。
で寄席では寄席に向くもの、若いうちだから出来る新作を今のうちにドンドンやっているみたいです。
しかし問題作ですね。
ミスター高橋さんの本は「あれ書いちゃ…」みたいなところがあったんだけど、あれがあって初めて見えた本質ってのがありましたね。
レフリングに左右されているものの、見方って言いますか…。
2. Posted by 4k    2014年10月13日 13:46
松之丞さんの談志好きについては新ニッポンの話芸ポッドキャストで聴きました。まさに若いうちだからできる問題作で良かったです。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
タグクラウド
メッセージ

名前
メール
本文
サイト内検索
4k主宰落語会『シェアする落語』情報
シェアする落語 第19回 雷門音助 ご予約受付中!
プロフィール

パートナーブロガー 一覧 | アジャイルメディア・ネットワーク
シェアする落語に出演された落語家
管理人に連絡
記事検索
記事カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント