『シェアする落語』次回は7/7です。

2013年03月14日

第五回生寿成熟の会 @ワッハ上方・上方亭 2013/03/12


大阪へ。ずいぶん強行日程の出張だったので、どこにも行けないだろうと思ったら、仕事の後に時間が取れた。じゃ落語だ。




ワッハ上方掲示板
 普通は天満天神繁昌亭の夜席(なんと五代目文枝追善の会)に行くところ、ここはあえてワッハ上方に行くのが二ツ目好きの私でございます。もっとも上方に二ツ目も真打もないけどね。

露の紫 『延陽伯』
笑福亭生寿 『牛ほめ』
笑福亭鉄瓶『卒業式』(新作・自作)

仲入り

笑福亭生寿『幽霊の辻』
(作・小佐田定雄)

三味線 佐々木千華 

で行ってみて気が付いたんだけど、
 
ワッハ上方、もうすぐ閉鎖なのね。
橋本府知事(当時)の行政改革でバッサリ切られたと。
 
僕が行ったときには展示スペースの見学は既に終わっていて(18時まで)、中入りの時にちらっと見ただけだけど、ま、なんばの一等地(なんばグランド花月の真ん前・地下にはNNB48シアターもあり)で、借金まみれの地方自治体がやることではないなと思った。
IMAG1682
IMAG1681
ワッハ展示
横浜にぎわい座の感じとは、なんか違う。

とはいえ、展示はともかく芸人さんにとっては貴重な発表の場・稽古の場がなくなるのは確かに痛い。特に落語ができるスペースって限られているからなあ。

上方亭は席数74。
固定された背もたれのない三人掛けの椅子が並んでいる。照明がとても充実している一方で、舞台が低く山台がない。前列の人が邪魔で、後ろの方からは膝元まではなかなか見えないと思う。
上方亭舞台

IMAG1674

まあ、なにわともあれ、この会場での『生寿成熟』もこの日が最後。
お客は結構入ってました。


●露の紫 『延陽伯』
初めて。丸く柔らかな雰囲気が落語向きだなあと。
近くのコンビニの店員が生寿さんに似ているとか、たわいもない話が客が湧く。

噺は江戸の『たらちね』の原型。ところどころトチっていたけど、なかなか楽しい開口一番。その後、高座返しを担当。
 

●笑福亭生寿 『牛ほめ』(池田の牛ほめ)
見台と膝隠しが登場。
実は二回目なのだ。前に繁昌亭・松喬一門会の開口一番を務めていたのを聴いております。

まくらが長くて内容が興味深い。上方亭の思い出。見習いの時、ここで開かれた師匠・笑福亭生喬師と桂南天師の会『らくご道』の舞台の上に呼び出されて、名前を貰ったと。そしてしばらくして自分の会を開くようになったと。ああ、そんな思い出があったらさびしいだろうねえ。
淋しい話だけど面白く聞かせてくれるので、客席はちゃんと笑ってくれる。

命名時に貰った色紙(額入り)も楽屋から持ってきてもらった。持ってきたのが次に出る先輩の鉄瓶さん(まだ私服)で、生寿さんびっくり、なんて一幕も。

『牛ほめ』は上方・江戸の違いはあんまりなくて、それだけに上方落語初心者の僕にも分かりやすい。
生寿さんの語り口は快調・明快でこれも分かりやすい。柔らかく親しみやすい表情も魅力的。一か所だけ仕込み思い切りトチったけど、すぐに気が付いて仕込み違いは回避。けどそこだけは受けなかった。あとはもう客席みんなで楽しんだ。


●笑福亭鉄瓶『卒業式』
見台はそのまま。
聴くのは初めて。名前の通り鶴瓶師の弟子。ちょっと博多華丸に似ている?似てない?
生寿さんのまくらに乗っかって、見習い時代に名前を貰った話。素敵に面白かったんだけどネタ割れしそうなので詳細略。
 
噺は自作。卒業式でウケを狙う中学生の話。たわいもないストーリーを台詞の面白さとテンポの良さで笑いに変えるのは落語らしくてとてもいい。

しかもこの「学園もの」で関東者には嬉しい「はめもの」が登場。『仰げば尊し』『君が代』でした。前者は唄入りで、三味線に合わせた歌声が「あおーげばー」と楽屋から、こういうのも上方っぽいよね。


仲入り 展示を見て回ったり。


●笑福亭生寿『幽霊の辻』
おっと、桂枝雀師の盟友・小佐田定雄先生の作だ。桂九雀師につけてもらったとのこと。枝雀直系ですな。小佐田先生にも電話で許可もらい「どんどん変えてもいいよ」と言われたけど、今回は習った通りに進めると。
 
ある師匠からどうも嫌われている、その原因が占いだった、という噺から「目に見えないものもありますよね」と、この噺へ。

初めて聴いたんだけど、実に完成度の高い滑稽噺で、中に挟まれる怪談はどれもかなりえげつないんだけど、ちっとも不快にならずただ笑い転げてしまう。落ちも奇麗に収まって素敵。枝雀四分類によれは「謎解き」なのかな、この落ちは。

さすがにネタおろしだけあって、ところどころトチった(んだと思う、たぶん)り、モタったりしていたけど、この素敵な落語作品の魅力は十分伝わってきたし、なにより茶屋のばあさんの「……まえかたのはなしじゃの」(かな?)と何度も繰り返す台詞の間には、フッと枝雀が香ったよ。

前にも書いたけど、僕が落語を面白いと思ったのは小学生の時にラジオで聴いた談志『野ざらし』と枝雀『住吉駕籠』なので、同じフレーズのリピートの中でどんどん笑いが膨らむところが何とも懐かしくて。
笑福亭で初なんだ!

ご本人はまだまだ不本意でしょうが、僕は楽しかったです。

木戸銭も1200円と安いのに、ちゃんと三味線が入るのが上方らしくて嬉しい。
演者との距離の近さも僕好み。懸命に高座に取り組む若手のやる気が感じられたし、お客さんの雰囲気もいい。大好きな繁昌亭を振り切って来た甲斐がありました。

なお


とのことで、お二人とも東京での会を企画しているそうです。行けるかどうかわかんないけど、東京の落語ファンに彼らの芸がどう映るのか、楽しみであります。

なお『生寿成熟の会』は、僕がまだ行ったことのない「動楽亭」で継続するとのこと。
お近くの方はぜひ。


※生落語を楽しみたい方のための「シェアする落語」もよろしくお願いいたします。
 

m_shike at 23:48コメント(4)トラックバック(0)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

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コメント一覧

1. Posted by 明彦   2013年03月17日 01:03
初めてお邪魔します。東京出身なのに関西に来てから落語好きになったもので、上方落語、それも濃い笑福亭をひいきしているおっさんです。
四家さんのブログは、松喬一門会を取り上げて下さったのでチェックさせて頂いていたのですが・・・。
数十年後笑福亭の正統派として君臨すると確信している生寿さんの会で、この日そうと知らずお会いしていたことが分かって嬉しかったです。
『幽霊の辻』本家の枝雀師匠に加えて、権太楼師匠のCDも出ているようですが・・・。
今後も上方落語、それも渋くて濃くてまだ江戸で知られていない方々をよろしゅうお頼も申しま。
2. Posted by 4k    2013年03月17日 20:52
明彦さん
コメントありがとうございます。
桂派と笑福亭の違いがいま一つわからない(米朝師と六代目松鶴師の違いと勝手に解釈してますが)上方初心者です。どちらを取れと言われたら江戸を取りますが、言われなければ江戸も上方も好きです。笑福亭の若手では、喬若さんが好きです。この前聴いた笑助さんもなかなか。

それにしてもいい会でした。帰りに寄った立ち飲み屋も良かったです。

> 今後も上方落語、それも渋くて濃くてまだ江戸で知られていない方々をよろしゅうお頼も申しま。

ぜひご教授頂ければと思います。よろしくお願い致します。
3. Posted by 明彦   2013年03月18日 00:22
返信有難うございます。プロフィールを拝見して恐縮しています。
上方で一番お得なのは、もしかしたらこの会かもしれませんね。
松鶴師匠(生ではうかがってませんが、CDはほぼ全部揃えました)と米朝師匠(辛うじて生で落語を聴けました)は、ある意味表裏一体ですので・・・。
両方の系統を押さえると、上方落語の全体像がある程度つかめるような気がします。
(ちなみに先代文枝師匠は、事実上五代目松鶴の弟子でした)
ところで、二つ目?好きでいらっしゃるのでしたら、鉄瓶さんがツイートしてはる29日の会を是非。
相方の佐ん吉さんは吉朝師匠(志ん朝師匠と並ぶ損失でした)の弟子では最年少、米朝系の王道を若々しく小気味よく聴かせてくれます。
数十年後の米朝一門にはこの方が君臨していると、やはり勝手に思っています。
4. Posted by 4k    2013年03月18日 09:18
いろいろありがとうございます。
吉朝師の弟子だと吉坊さんは聴いたことあります。若手ではないですが雀々師や春蝶師も聴いてみたいです。せっかくこっちにいらっしゃってるので。

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