『シェアする落語』次回は7/7です。

2012年10月22日

歴史の一瞬を目撃した!NHK新人演芸大賞・落語部門 本選 桂宮治が受賞! #rakugo #落語


どうせ当たんないだろうと往復はがき出さなかったのに、くじ運の強い方のご厚意により、行ってきましたNHKふれあいホール。当選すると2名まで観覧できるのです。
新人演芸大賞
皆様既にご存じのとおり、我らが桂宮治さんが大賞を受賞されました!
 


(11月4日 NHK総合でテレビ放送がありますので、以下ネタバレ注意で)





●春風亭ぴっかり『反対俥』
なんか、出囃子が乱れた?
初めて見たぴっかりさん。印象としては「口跡なかなかよい」「ある程度太い声も出せる」「めっちゃくっちゃなアクションも器用にこなす」かなあ。この噺を自分に合うように大幅に改作していて、それはある程度成功していた。本選出場はフロックではない。
客席の特定の部分から笑い声が出ていたのがなんとなく、なるほどなあと。


●桂二乗『癪の合い薬』
こちらも初めて。やかんなめの元になった上方噺。柳家喜多八師→春風亭朝也さんの大爆笑路線とはやや違う、ちょっと知的で、はんなりとした噺なんですな。
アウェイにも拘らず、しっかりと落ち着いた高座で好感。ただ、もう一つパンチが欲しかった。


●桂宮治『元犬』
何の誇張もなしに正直に言うけど、僕はこんなに面白い元犬を聴いたことがない。
時間内に収めるための細かい刈り込み、口入屋がシロを犬と知っているという設定、「掃き溜め」を「ごみ置き場」と置き換えたりする細かい工夫、これらが独自のものなのか習ったものなのかはわからないけど、どれもピタリ的確。いらない間が全く空かないのも素晴らしい。

そして、審査員の堀井憲一郎氏も指摘していたが、犬がきちんと犬に見える!
擬人化された犬ではなくて、ちゃんと本物の犬に!
犬好きなら微笑むし、犬嫌いならヒヤッとするくらいに犬!
その吠えっぷりが落語のリズムを全く崩さず、むしろグルーヴを創り出している!

こうした全ての工夫が、目の前の客を喜ばせるために考え抜かれ、しっかりと機能している。
どれだけ稽古すれば、ここまで仕上がるのか。
正直、すげえとおもった。

「新人」の大賞本選に出ている場合じゃないんじゃないのと。



前半三人が終了して、演者のコメントと審査員コメント。
ここでも宮治さんが見事に笑いを取る。その意識はあくまで客に向いていて、離れない。


ここから後半。

●春風亭昇吉『たがや』
大変残念なものを見た。
この大賞に賭けてきたのか、寄席でもずっとこのネタをかけてきたらしい。
でもね。やっぱり季節は十月なんですよ。ここでこの噺を掛けるのは客の気分無視ですよ。

さすが演りこんできただけあって確かにしっかりした芸なんだけど、あくまで噺を演ることにしか意識が行っていない。客を見ていない。
能や芝居ならそれでもいいのかも知れないけど、素人のくせしてこんなことを言うのは本当に嫌なんだけど、あえて言う。落語ってそういう芸じゃないと思う。せっかく精進に精進を重ねたのに、それは方向が違うのではないか。

深夜寄席でいきいきと爆笑新作『安いお店』を掛けてちゃんと客を沸かせていた昇吉さんはどこへ行ったのか。決して下手ではないだけに、なにかとても寂しい。


●笑福亭喬若『長短』
楽しかった!

間のコントロールが素晴らしい。
まくらなしでスバーンと入って、さんざんお馴染みのこの噺を、間だけで客を引き付けていく。「長」の間の抜けた笑顔を見ているだけで幸せになれる。見事。
また見たい。独演会行ってみたい。

前に繁昌亭で聴いたときもなかなかいいなあと思っていたけど、今回はまた非常に良かった。関東人にも分かりやすい上方の魅力だなあ。

ただ一つだけわからなかったのが、この噺、見台は必要?
膝のあたりでもきっちり仕草をやっていたのが横から見えたので、なくてもよかったような。これはテレビでもう一回確認してみよう。


五人出揃って、僕の感想はこれ。

宮治さんは、今回の目標を本選出場に置いて、大賞受賞はもう少し先に考えていたはず。だって二ツ目になってまだ1年にも満たない。
過剰な期待に応えていくのは大変だ。早すぎる受賞は嫉妬も浴びる。いろいろ面倒なこともあるだろう。無理もない。


しかし歴史は、彼を待たなかった。許してくれなかった。

これも正直に言うけど、去年の結果を見て、僕はこの大賞の審査をあまり信用していなかった(尊敬する堀井憲一郎氏がいるのに!)
少なくとも僕とは違う判断をするだろうと思っていた。なんか今、審査員の皆様にお詫びしたい気持ちだ。

一番、お客さんを楽しませた人が賞を獲った。
良かった。


宮治さん、本当におめでとうございます。

あなたと同じ時代を生きて、あなたの落語で幸せになって、そのことを友と語らうことができる。この快挙を目撃することができて、こうしてブログに記すことができる。この幸せを、本当にありがとうございます。

ほか四人の皆さんも、それぞれに存分にやりきった清々しさがありました。お疲れ様でした。

そして、審査の最中に該博な落語知識を披露して客を楽しませてくれた黒門町育ちの水谷アナ。
ものすごい高ーいハイヒールで登場、楽しいコメントで番組にしっかり花を添えた矢口真理さん。延びに延びた準備の間何とか間をつないでたNHKエンタープライズの布施さん。いきなり駆り出されて前説を見事に盛り上げた三遊亭ございますさんと林家けい木さん。皆さんお疲れ様でした。

新人演芸大賞チラシ


そして…

さあ予約だ!
miyaji_kisshoh

[落語会情報]桂宮治 vs.立川吉笑(第2回)

前回→綱渡りに挑む二人 桂宮治vs立川吉笑@らくごカフェ 2012/07/13
 
 

さらにさらに。

[落語会情報]浅草演芸ホール十月下席 前半 10月21〜25日:鯉八さん夢吉さんと、深いところで出ますよ。トリは遊雀師。

[落語会情報]立川こはるvs桂宮治「負けてたまるか!?」第2回 2012/10/26 道楽亭では実力派二ツ目の競演!

[落語会情報]お江戸なまらく両国亭 立川らく兵、桂宮治 2012/10/28 さすが「なまらく」この組み合わせは面白い!

[落語会情報]桂宮治の会 「宮治のきもち“躾(しつけ)”」 2012/12/10まだ先だけど、予約しないとね!

これ以外にも、宮治さんはあちこちに出ます。ぜひ生で体験してください。


宜しければ、こちらもどうぞ。
自らの不安をも料理する芸協スター候補 桂宮治 (2012/07/13桂宮治vs立川吉笑@らくごカフェ に寄せて)  

はい、私からは以上です。

●関連リンク


m_shike at 09:30コメント(5)トラックバック(0)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

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コメント一覧

1. Posted by はるこ   2012年10月22日 15:35
落語家の娘として
上手い下手の評価は聴き手の受け止め方ですが演芸大賞に季節感は関係ないと思います。そしたら全員秋のネタ以外出せなくなります。季節感のない落語もありますが演芸大賞はあくまでもコンクールです。
得意だからするではなく勉強したものをするのがコンクールです。独演会、寄席の取りなどのときはそれこそ季節感のあるものや取りネタをされればいいことで若手、二つ目というものは勉強してきたもので当たり前です。
私は宮治君のことも最初から存じて大賞を取れたことをとてもほこりに思いますがこのブログで他の方の批判は悲しいものがあります。宮治君もこのコメントをなんとも思わないなら残念なかたといわざるえません。
2. Posted by 4k    2012年10月22日 22:10
コメントありがとうございます。

まず、私は宮治さんとは面識ありますし、ツイッター経由でこの記事についてお礼も貰いましだか、当たり前の話としてこのブログに書いていることは私の意見であって宮治さんの考えていることとは全く何の関係もございません。
勝手な仮定でもって宮治さんが「残念」などと、つまらない巻き添えにするのはやめていただきたい。


次に本題、ネタと季節感の話です。
ご存じのとおり、コンクールに関わらず「夏に初天神」「夏に夢金」など、あえて季節を外したネタがかかることはよくあります。そのことだけで目くじら立てていたら、それこそ落語なんて聴けません。談四楼師の文七を夏に聴いて泣いたこともあります。

「客を見ていない姿勢」がネタ選びから演じ方に至るまで感じられて。それは残念だった。という話です。

僕が感じたものと同じものが、11月4日のテレビ放送に流れるのかどうかは分かりませんが、まずはご覧になっていただければ、と思います。
3. Posted by 4k    2012年10月23日 21:28
ぴっかりさんファンの観客による感想です。

NHK新人演芸大賞(20日):イザ! http://33loco33.iza.ne.jp/blog/entry/2904389/
4. Posted by ふみ   2012年11月04日 18:10
本日オンエアーを観ました。
結果を知らないで観てましたが、宮治さんと喬若さんのどちらかだろうなという感想で結果を見てました。
恐らく、5人の噺家さん全て素晴らしい実力をお持ちなんだと思います(90人以上の中を勝ち上がってきてるのですしね)。
まぁ、順位を決めるという番組の構成上、普段の実力がでないこともあると思います。
寄席でも、主任が一番面白いわけではなかったりしますしね。
まぁ、楽しく楽しく。
5. Posted by 4k    2012年11月04日 18:28
この5人なら、誰がとってもおかしくない実力があると僕も思います。番組をきっかけにぜひ多くの方が生でご体験されるといいなあと思います。

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