2012年06月29日

自らの不安をも料理する芸協スター候補 桂宮治 (2012/07/13桂宮治vs立川吉笑@らくごカフェ に寄せて) #rakugo #落語


桂宮治を推薦するのにあまり言葉はいらない。面白いから聴いてみな、これでいい。
IMG_6810
(あかぎ寄席にて撮影)

よほどの「渋めの芸しか認めない自称落語通」でもないかぎり、宮治の落語を「つまらない」と否定するのは困難だろう。

なりたて二ツ目にも拘らず、スピード・テンポ・声質・声量・表情・ギャグセンス・アドリブ対応力まで、多くの人に愛される才能と技術をすでに持ち、オーバーアクトから小技まで見事に駆使しながらぐいぐい客を引っ張る。
NHKラジオのレギュラーも持ち、昇進披露目の内幸町ホールはほぼ満員だったそうだ。

それでも「お前さんの言うことは信用できない」というのであれば、こちらはどうだ。その披露目会についての評。
★宮治さん『宿屋の仇討』  伸治師譲りで、呆れるくらい出来上がっている。噺に変な隙間が空かず、市馬師や白酒師でも苦心しているこの噺を見事に演じきったのには驚いた。真打芸である。萬事世話九郎の「いはち〜」の大きな声だけで、これだけ可笑しい人は初めてではあるまいか。
(中略)
二ツ目になった途端、東京落語界の二ツ目トップクラスに躍り出た印象。一之輔師匠より速い年数で抜擢されてもおかしくない。
落語の蔵: 石井徹也の「らくご聴いたまま」 2012年5月特大号 

まあ、落語家については好みが分かれるので、宮治の芸を「くさい」と嫌う向きもあるのかもしれない。宮治が落語家を目指すきっかけになったのが「YouTubeで観た桂枝雀」だというのだから、これはまあしょうがない。枝雀が苦手な人も多かったろうし。

まあともかく、その面白さは頭抜けていて分かりやすく、いちいち説明する必要がない(じゃここまでの文章はなんなんだ?)宮治であるが、僕にとっては もう一つ別のチャームポイントがある。

「弱気」である。

こっそり、でも大きめのフォントで言おう。あれだけの芸を持ちながら、これだけ人気があり、期待されていながら、宮治は弱気だ

俺このままでいいのかな。俺これからどうしよう。
宮治は、実はそう考えている、過剰な不安を抱えている。
サービス精神旺盛で、それだけに気遣いもする宮治は、ほとんど表には出さないけど。

高座数席と飲み会一回の、あとツイッターのやり取り少々の接触しかないけど、僕にはそう見える。

「新進二つ目なら宮治」と、あちこちで評価されているにも関わらす、宮治は弱気なのだ。

弱気の原因は何か。
落語に目覚めたのが比較的遅く、いろいろ回り道をしてここにたどり着いたという経歴のせいもあるかもしれない。
それに、すでに大人気とはいえ、別に将来が保証されたわけではない。「可愛い娘がいるんで頑張らないといけないんです」は高座での口癖。

ただ、タフな宮治はここから二枚腰になる。
自らの弱気を上手にキャラに取り込んで、笑いを取る。
 
たとえば『道灌』。さむーいギャグを言ったあと「悲しくなる」八の表情。
『強情灸』で灸が熱くで(ホントに熱そうに見えるのだ)だんだん泣きの表情に変わるところ、どれも絶妙なのだ。
けれど、こうした「悲しい」「さびしい」「キツイ」表情は、実は宮治の「地」なのではないか。
サービス精神たっぷりの楽しい落語を目指す宮治は、自分の不安をもしっかり料理して、笑いに変えて、噺に厚み・奥行きを作っている。何だか、そんなふうに見えるのだ、僕には。

まー前回同様考え過ぎなんだけどね

落語芸術協会はスターづくりが弱い。
下手に笑点メンバーがいるせいか、若手のスターがあまり育ってない。
いまの宮治にはかつての二ツ目・春風亭一之輔が持っていた「 二ツ目ににあるまじき実力とスター性」がある。
さっさと抜擢してしまえばいいのだがそれができないのが芸協(年功序列遵守なので立川流で寄り道した実力者・柳家小蝠が上がれない)。
ならばまずは寄席で中トリを取らせたらどうだ。それくらいはありなんじゃないか。
 
内心の不安と戦いながら、持ち前の強いハートで、宮治はきっとしっかり勤め上げるはずだ。どうですか歌丸会長。来年か再来年あたりで。

↓中トリ宮治を観る前に、らくごカフェで目撃しましょ。桂宮治vs立川吉笑
 
7月 13日 (金曜日) 
◆「桂宮治 vs. 立川吉笑」
客席をグイグイ引っ張る芸術協会期待の二つ目・桂宮治と、スピード出世で注目を浴びる立川談笑門下の吉笑の二人会。何かが起こりそうな予感! 
出演:桂宮治、立川吉笑 
開場18時半(チラシでは18:45ですが18:30が正解) 開演19時 
料金:予約1500円、当日1800円
予約・お問い合わせはらくごカフェのページをご参照くださいな。  
桂宮治 Vサイン



m_shike at 09:44コメント(0)落語  このエントリーをはてなブックマークに追加

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