2012年04月30日

笑二大ネタで爆発と吉笑の新たな方向性『第754回 二ツ目採用試験』立川談笑一門 弟子勉強会(第三回) #rakugo #落語


(2012/04/26)

仕事をほんのちょっと早めに切り上げて、走って走って高円寺。
二度目だから場所はすぐに分かった。ありがたい。
受付は三番弟子の立川笑吾さん。

立川吉笑『てれすこ・序』
立川笑二『化け物使い』

仲入り

立川笑二『真田小僧』
立川吉笑『悲し笑い』

談笑一門弟子勉強会01


●立川吉笑『てれすこ・序』
まくらの途中から入場。
しきりと「最近精神が不安定」と訴える。なんか変な感じである。
噺のほうは初めて聞いた時よりかなり整理されたようだけど、その分何か灰汁が抜けすぎた感もある。
ま、それでも初めて聴いた人は衝撃を受けたでしょう。ぶっ飛んだ噺であることは間違いないです。
 

●立川笑二『化け物使い』
ここで一番前の席に移動。相変わらすにこやかに登場。前座仕事を弟弟子・笑吾さん(12歳年上)に教える話など、まくらでもそつなく笑をとり「人を使うというのは大変なもので」と噺に。

え?

まさかの前座大ネタ。
ここで内心突っ込み「お前は先代柳朝か」。
江戸前の男・先代春風亭柳朝は前座(当時・照蔵)でありながら、寄席でなんと『鰍沢』を掛けて喋りきって「お先」と帰ってしまった伝説を持つ(『赤めだか』に出てくる)。それに匹敵するんじゃないかと。

しかし、これがまたいい出来なんだ。驚いた。
特に前半、権助が「隠居の人使いの荒さに」ついて語るシーンが抜群に面白い。こちらも『赤めだか』に出てくる、練馬の一軒家で家元談志が前座たちをこき使うシーンを連想させるのだ。笑二さんは当然ながらそんな目には遭っていないのにね。

上記2点については、@HenryTOYOTAJrさんと見解が一致。

後半の隠居による「化け物こき使い」も、何ら淀むことなく大変スムースに次から次へとオーダーを出してくるので、振り回される化け物のてんてこ舞いぶりが目に浮かぶ。いやあいい出来ですよ。

うーん、去年はまだ普通に柳家系の前座だったのに。恐るべし。何だか岩崎恭子の金メダルを思い出したよ。
後日ある方から「吉笑さんと勉強会をやることが、刺激になって、成長につながっているのでは」という意見を聞き、膝を打った。なるほどねえ。

本人の感想 
「化物使い」「真田小僧」に関して(笑二)|立川談笑一門 弟子勉強会 ブログ 


仲入り


●立川笑二『真田小僧』
大ネタから一気に軽い噺に戻して、順番はどうなってるんだというツッコミはやめておこう。
この噺あまり好きじゃないんだけど、息子の描き方にちょこちょこ斬新な工夫(途中から噺家みたいになったりする)があって、楽しい仕上がり。


●立川吉笑『悲し笑い』
「笑二が安定していて助かる」と相変わらず「不安定な自分」を織り込んだまくらから新作ネタおろし。
 
これがまた、実に奇妙な味の一品。

与太郎が幸福を追求しているうちにとんでもない悲劇を引き起こしてしまうという、グリム童話の残酷さを落語の世界に持ってきたような噺で、家元語るところの「人間の業」について迫っているようでもある。

まだまだ未完成だが、この噺をかけるために、わざと自分で不安定な方向に気持ちを持って行ったのではないかと思うくらい意欲的なチャレンジで、僕はとても感心した。

新作は「作って捨ててまた作る」ものなので、この噺を磨くべきなのか、この噺のベクトルで新しい噺を作るべきなのかはわからないけど、吉笑さんの中に『てれすこ・序』や『舌打たず』、『11月46日』のような「客の思考プロセスそのものをいじってくるような噺」とは別の路線があることは間違いない。
 
そこを目指すために足らないものはなんなのか、本人はよくわかっているはず。

今回に関して、 あえて僕から見た課題をひとつ指摘すると「与太郎の性格づけ」。

師匠である立川談笑師『金明竹』の与太郎が他の与太郎とかなり違う(一説によると故・古今亭志ん五師の影響があると)ように、吉笑版の「幸福を追求する与太郎」を作ってしまったほうが、この噺の世界は成立しやすくなると思う。

あとは火事の描写かな。

という訳で笑二さんの大爆発と、出来に大満足、という訳ではないが、吉笑さんの新しい方向性を見せてもらい、この先の楽しみがまた一つ増えた気がする日でした。

次回、第四回『立川笑二 前座生活0.96周年を祝う会』は5/24 19時開演。
僕はちょっと行けないかも。皆さんはお時間ございましたら是非。
談笑一門弟子勉強会02


m_shike at 09:30コメント(2)トラックバック(0)落語 | 生落語感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

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コメント一覧

1. Posted by Tam   2012年04月30日 09:49
私はあの日初めて笑二さんを聞いたのですが、化物使いの好演に吃驚しました。あれだけやれる前座はそうそういないですよね。吉笑さんは、試行錯誤中というところでしょうか。「悲し笑い」は、今のところ後味の悪さが目立ちますが、談志師匠の言う「馬鹿は怖い」を描く名作になる予感がします。今後が楽しみですね。
2. Posted by 4k    2012年04月30日 10:34
まったくおっしゃる通りです。いま楽しませてもらってますけど、先の楽しみも膨らんでいく一方です。

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