2012年04月02日
左談次師の凄味 涙誘う正楽師のはさみ 末廣亭三月余一会 立川流一門会 (2012/03/31) #rakugo #落語
毎年ものすごく行きたいと思いつつ、行けないのがこの3月余一会『三派連合落語サミット』。
今年は土曜日にして、特別企画。昼は落語協会・芸術協会。
夜は立川流一門会で家元談志を偲ぼうと。

並びましたよ14時過ぎから。雨の中、靴の中びしょびしょにしながら。
瀧川鯉〇(前座)『新聞記事』立川談吉 『権兵衛狸』立川平林 『漫談 安木節(どじょうすくい)』』マグナム小林 『バイオリン漫談』立川雲水 『紀州』立川生志 『堀ノ内』東京ボーイズ 『漫謡』立川志らく 『親子酒』土橋亭里う馬 『猫久』吉川潮 立川左談次 立川談幸 立川志らく 『座談会』立川談幸 『片棒』立川左談次 『阿武松』林家正楽 『紙切り(相合傘 談志横顔 立川談志一代記)』立川龍志 『百年目』
●瀧川鯉〇(前座)『新聞記事』
前座が誰か楽しみだったんですが、なんと芸協から。
でもこの人いいですよ。
●立川談吉 『権兵衛狸』
思わず待ってましたと声をかける。僕は本当に談吉さんが好きなのでよほどのことがない限りいいねーとしか言えないんだけど。この会にはやはりこの噺。
僕の大好きなシーン「権兵衛さんが一人でいろいろ考える」のなかに「談吉さんはだれの弟子になるんだろう」ふはは。誰なんですかね?
僕の大好きなシーン「権兵衛さんが一人でいろいろ考える」のなかに「談吉さんはだれの弟子になるんだろう」ふはは。誰なんですかね?
まくらの家元エピソードは「一緒に散歩して、コンビニのごみ箱をテーブル代わりにプリン食べた」。
●立川平林 『漫談 安木節(どじょうすくい)』
前に広小路亭で観た家元にどじょうすくいを見せた話からどじょうすくい。まくらの告白「志の輔師匠の弟子になろうとして本人の許可はとったが、弟子たちに反対された」。
●マグナム小林 『バイオリン漫談』
今日の色物は元立川流のこの人でしょう。エピソードは「俺はタップはできるがお前はバイオリンもやるから負けたな、と言われたが、家元タップもできません」
●立川雲水 『紀州』
すみません、ちょっと眠くなっちゃいました。雲水師匠のせいでなく。僕のせいです。
まくらのエピソードは「離陸する飛行機の中で家元がホテルの朝食バイキングからがめてきた納豆を食べた。糸が飛んじゃって」。
●立川生志 『堀ノ内』
勢いがあっていいですねえ。まくらのエピソードは「ホテルで業務用のラップを貰ってきて褒められた」「小さい入れ歯を無くして、見つけた1万円やるといわれたので見つけたら、偉え5000円やると」。
●東京ボーイズ 『漫謡』
プログラムに漫謡と書いてある。元まむしプロ。歌手の名前ずらーっと並べて、超短縮版中之島ブルース。何度聞いても面白い。三味線のチューニングがずれているように感じるのは気のせいなのか。僕の耳が悪いのか。
●立川志らく 『親子酒』
大爆発。もうこの時点で雨中並んだ努力は報われました。この前の平成中村座より明らかに大爆発。酔った親父の繰り言の中にいろんな人へのいろんな悪口がざくざくと。
「寄席のほうから芸協と立川流が一緒になれだと。寄席が欲しいのは志の輔・談春・志らくだけだろ。次に出てくる里う馬師匠なんかいらないだろ。だいたい一緒になるときは芸協が立川流の傘下に入る時だ!」
これが嫌味に聴こえないのは落語技術がすごいから。うまいよね、やっぱり。
「寄席のほうから芸協と立川流が一緒になれだと。寄席が欲しいのは志の輔・談春・志らくだけだろ。次に出てくる里う馬師匠なんかいらないだろ。だいたい一緒になるときは芸協が立川流の傘下に入る時だ!」
これが嫌味に聴こえないのは落語技術がすごいから。うまいよね、やっぱり。
●土橋亭里う馬 『猫久』
「芸協にはいらない里う馬です」すみませんまたここで落ちてしまいました。里う馬師匠のせいじゃないです。雨の中並んでて疲れたんです。
仲入り
●吉川潮 立川左談次 立川談幸 立川志らく 『座談会』
幕が上がると、在りし日の家元・立川談志の写真が飾ってある。
テープでかかるのは『小猿七之助』。昭和43年だったかな?
そのあとに出てきた吉川氏「ずっと聴いていたいですね」。と座談会が始まる。
これだけいろんなところで家元の話を聴いているのに、まだまだ出てくる知らないエピソード。
内弟子・談幸師匠は隣の工事現場から「あそこは畑だったんだからいい土だ、もらってこい」と言われて、ネコで運んだんだそうだ。
他人の目があると厳しい師匠だが、二人だけだととても優しいと。これ三人とも同じことを言っていた。
●立川談幸 『片棒』
というわけでケチ親父の話を。いつもながら「怒っているけど目が笑っている」談幸さんが好きです。最後までやってくれた。聴けて良かった。
●立川左談次 『阿武松』
本日のハイライトにしてMVPです。
いつもの軽みは脇に置き、ものの見事な名人芸。
地噺の語り口でここまでうっとりさせられるとは。
もうね、ほんとに音楽ですよ音楽。酔いました。美しい落語に。
拍手がもの凄かったですよ。
『五人廻し』『町内の若い衆』自作『本読み』など左談次師匠の軽妙さは大好きな僕ですが、この日は完全にやられました。自らの不見識を改めるとともに、独演会に行きたいと思いました。でも平日なんだよなあ。
末廣亭のエピソード「文楽師匠と円生師匠が火鉢を囲んで何か話している。近くで聴いてみたら、論じあっていたのは『おっぱいの触り方について』」
●林家正楽 『紙切り(相合傘 談志横顔 談志一代記)』
プロジェクターを持って上がったのは初めて見た。
まず試し切り。注文で家元の横顔。
ここで注文を取らずに「まあみなさんで、美空ひばりでも聴こうじゃありませんか」と『川の流れのように』を流しながら、あらかじめ切ってきた作品を次々と影絵芝居。
これが談志一代記になっている。
これが談志一代記になっている。
入門・小さんに稽古つけてもらう・志ん生・三平・タキシードでスタンダップコメディ(キャバレーかな)・そのうちひげとバンダナになり、晩年を迎え……。
そこに美人画のような着物の女性が二人出てくる、あっ、もしやこれは!
二人の美人の間の空間に、家元の横顔が!
正直に言いましょう。紙切りを見て泣いたのは初めてです。またも鳴り止まぬ拍手。やはりこちらもMVPです。
●立川龍志 『百年目』
「30年ぶりの末廣亭。ずいぶん変わりましたね。紙切りに電気使うんですね。電力不足なのに」エピソードは「酒飲んで稽古つけに貰いに行って、稽古にならないので、じゃ飲むかと、そのまま二人で飲んだ」。
で、噺のほうがまた素晴らしく。
先日、古金亭で聴いた馬生師の百年目もしみじみよかったけど。どちらかとれと言われれば、愛嬌のある龍志師のほうが好きです。ほんと、いい出来でした。
というわけで、立川流の凄さ、いや落語・寄席芸の凄さを思い知った夜でした。
ところで翌日のニュース。夜の寄席に活気を取り戻そうと、円楽一門会、立川流と手を組むことを決めた落語芸術協会(芸協、桂歌丸会長)。きっかけをつくる発言をした定席の一つ、末広亭(東京・新宿)の真山由光社長は「言ったことが理解してもらえた」と喜ぶ。真山社長はこの動きに連動する形で夜の入場料を割引することを決めた。幅広い観客層を呼び込む起爆剤となるか−。
さて、どうなるか。
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コメント一覧
1. Posted by 並河逸成 2012年04月02日 14:56
いや、好みが完全に一致していて気持ちが悪いほど。今度飲みましょう。
2. Posted by 4k 2012年04月03日 09:09
それは本当に気持ち悪い……じゃない、光栄です!いつもツイート読んで勉強させていただいているので本当に光栄です。この日も雨中寒さに耐えつつ並びながら、並河さんの楽しいお話をそれとなく伺ったりしておりました。盗み聞きすみません。飲みの件ぜひぜひお誘いください!
3. Posted by 並河 2012年04月03日 10:20
末広亭ではある意味4Kさんに聞こえるように話していました。爺の繰り言ですがw。
4. Posted by 4k 2012年04月03日 13:59
> 末広亭ではある意味4Kさんに聞こえるように話していました。爺の繰り言ですがw。
ありがたいです!
ありがたいです!