2011年11月28日

家元死してこの弟子を遺す 立川談吉 二つ目昇進披露の会(2011/11/27) #rakugo


1127dankichi

立川談吉さんは、前座の頃から気になる存在だった。

立川談吉


立川流には珍しい「ぐにゃぐにゃ」とした所作と、でもどこか家元談志から引き継いだ香りも語り口に見えて、なかなかユニークな気がしたのだ。

ちょっと前に広小路で聴いた『ぞろぞろ』もなかなかよかったので、この落語会に行くことにした。ゲストも豪華だし。日曜日だし。


予約メールを送ったら、本人から「ありがとうございます!」とメールが返ってきたのが11月の17日。

そしてその一週間後に、家元・立川談志は天に召されてしまった。

後の話に出てくるが、弟子の中で一人許されて家族とともに最期を看取り、葬式にも参列したのが、この立川談吉さんなのである。
 


●前座 立川春樹『浮世根問』
ちょっと噛み気味だったけど、きれいな語り口でふわっとした雰囲気に好感。


●立川談修『宮戸川(上)』
久しぶり。本日は会心の出来だったのでは。人物の書き分けが巧みで、緩急もぴたりと決まり、オチのつけ方も良かったです(本が破れていたとか、つまらんもんなあ)。
この人に真を打たせぬまま逝ってしまったのは家元、悔やんでいるでしょう。


●立川キウイ『悲しみにてやんでぃ・立川談吉バージョン』
キウイさんらしい愛嬌たっぷりのまくらはやはり家元の話。
なかなか楽しくて、このまま漫談で終わってもいいのになあと客が思っているところを見透かすような自虐ネタを入れた後に、なんと春風亭昇太作のこの噺をネタおろし。主人公は談吉さんに差し替えて展開。

これがなかなか、悪くなかったです。うまくはないけど、ちゃんとツボを押さえていた。ただ、どうせなら先にネタ割らないほうが良かったんじゃないかな。

主人公の恋人は、十勝出身で花子だから「十勝花子」というネタもあったかな。いや、そんなのはなくてもいいや。

キウイ師の昇太師作、もっとやってみればいいと思う。


●立川談笑『片棒・改の改 本日限定バージョン』
「噺家に喪はないんでございます。さて何をやりましょうかねえ。今の噺のあとですよ?」と、まずは家元の思い出話。ファンの中では有名な「桂南光襲名披露、小さん談志大喧嘩事件」。談笑師は目撃してたんだそうだ。ははは。

噺は『片棒・改』のさらに改作。家元が談笑・志らく・談吉を呼び出して「おまえたちどんな葬式を出してくれるか……という展開。
登場人物と本人のキャラをもう少し絡めたほうが良かったと思うけど、そこまで練る時間はなかったのかもしれない。

それよりむしろ「遺体を焼いたはずの焼き場から出てきたメカ立川談志をエクスカリバーで刺し殺す」というのは、云わば親殺しであって、そこまで徹底して茶にしないと家元への気持ちを整理しきれないということかも知れないなあと思ってみたり。
ちなみに「この噺は今日しかやりません。録音していいですよ」と談笑師が言い放った途端に、隣のご婦人はスマホで音録ってました。便利な時代ですな。

仲入り

●立川左談次『町内の若い衆』
「何で三平のところにコメント取りに行くんだ」客全員同意。
「あと三枝さん、泣き過ぎ」これもほとんど同意じゃないかな。
と、さっくりとまくらで笑いをとって、「談吉君は今日『鼠穴』をやります。「僕が鼠穴やっていいんですかねえ」と本人がまだ迷っているので、ここで発表してあげました」と衝撃のネタだし。
「ご存知のとおり家元の得意ネタです。家元のと「こーんな落差」をお楽しみください」。

そして「こんな雰囲気なら(自作の『本読み(読書日記)を掛けるために』)本持ってくればよかった」と苦笑いしながら、さらっと噺へ。

ヒザの役割を心得た、軽ーい語りは左談次師の技。短くまとめてトリにバトンを渡す。


●立川談吉『鼠穴』
ちょいと入れ込んだ、苦笑いした表情で高座へ。
「師匠についていると、おい、あれやってみろ、といつも言われるので、落語を3つ唄を3ついつも準備していた」と思い出を語り、「客席の2割程度しか売れてなかったチケットが師匠が亡くなったあとにここまで売れた。師匠からの最後のプレゼントだと思っております」と、噺へ。


予告どおりの『鼠穴』。


良かった。


確かに技術的には二つ目ですよ(ただし立川流の)。
これ二つ目昇進披露の会ですからね。


しかしこの大ネタに対してひるむことなくぶつかっていって、一歩も引かず格闘する姿には、本当に心から感動した。特に娘の前で兄を畜生と呼ぶシーン、狂気のこもった目と身体の震えは迫力満点。

気合や迫力だけじゃない、途中随所に挟んだ「ここら辺、師匠だといいのがありますなあ」と談志フレーズをちらりとご紹介。
これ、「ここらへん円生師匠ですとー」とか、『寝床』などで家元がよくやっていた手なんだけど、なんだかとても良かった。


「三文の得」で落としたあと、万雷の拍手のなかで、再び語り始めた。


「何か自分が壊れてしまえという気持ちになり、やれるはずのない鼠穴をかけさせていただきました」

「お話していなかったことがあります。私は「お前だけ見とどけてくれよ」と言われて、亡くなるまで師匠の傍に下りました」

「声が出なくなっても、目ぢからが凄かった。倒れてから亡くなるまでの一部始終が映画みたいで、本当にかっこよかった。すごい師匠についていたんだと思いました」

「ご家族の方も素晴らしくて、ちゃんとThat's a plenty用意してあって、お葬式でかけたんです。最後にあたくしが線香を上げたとき、曲が終わったんです」

「私は一度も『最後の弟子』と自分で言ったことはありません。そういうと、なんか終わっちゃうみたいで。でも今日、私が一度だけ叫ばせてもらいたい言葉があります」


「オレは談志の最後の弟子だ〜!」


談修さん・談笑師・キウイ師・左談次師が出てきて、談修さん司会、左談次師の仕切りで三本締め。めでたく終了。


落語にボクシングのようなファイティング・スピリッツを感じたのは、今夜が初めてかもしれない。

談吉さんと、談吉さんを盛り上げるために見事な連係プレーをみせた春樹さん、談修さん、キウイ師、談笑師、左談次師にお礼申し上げたい。素晴らしい夜だった。

生の高座は一度しか見ていない、威張るほどのファンでもなかった僕が、何で家元の死についてこんなに落ち込まなければならないのか良く分からなかったけど、今も分からないけど、談吉さん渾身の『鼠穴』によって、ちょっと吹っ切れたような気がする。談吉さん本当にありがとう。これからもあなたの冒険を追いかけさせていただきます。

ちなみに、今日はお花・花子・お花と、花のついた娘が三人も出てきた。これも昇進祝いの席に相応しいと、勝手に思ったりしたよ。


●関連記事

※追記
この日の夜急遽放送された『情熱大陸 立川談志』で、昨年9月に家元の高座と舞台裏を映していた。当時前座として付き人を務めていた談吉さんがちらちら出ていた。
それは良かったんだけど、この翌月に急逝する立川談大さんの姿が切なくて。
立川文都師と談大さん、二人の弟子に先立たれたことがどれだけ家元にとって辛かったか。思い出してまた泣けてしまった。

※追記2
『鼠穴』のサゲは談吉さんオリジナルだったそうだ。それもすげえ。


m_shike at 09:48コメント(4)トラックバック(1)落語 | 生落語感想 

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トラックバック一覧

1. [動画]立川談吉二つ目昇進披露の会  [ 裏[4k] ]   2012年03月28日 22:33
残念ながら本編の『鼠穴』は入っておりませんが。 ぜひ観てやってください。今年、わたくし四家正紀が推す落語家です(もう一人は立川吉笑さん)。裏[4k]:家元死してこの弟子を遺す ...

コメント一覧

1. Posted by K   2011年12月12日 02:05
こちらの記事を拝見して談吉さんに俄然興味を持ったので、一昨日の獅篭さんの東京落語会に行ってきました。

なるほど…「ぐにゃぐにゃ」だ(笑)
でも、何かまた見たくなる噺家さんですね。

こちらの情報は本当に参考になります!これからもいろいろ教えて下さいませ。
2. Posted by 4k   2011年12月12日 09:13
Kさん、コメントありがとうございます。
僕も獅篭さんの会に行ってました。権兵衛狸は家元の持ちネタの中でも大好きな噺だったのでとても嬉しかったです。

談吉さんは、観る度に好きになってしまう不思議な魅力があります。応援していきたいです。
3. Posted by こまこ@家元ラブ   2013年09月17日 19:11
初めまして。
今日、上野広小路亭で「立川らく兵」さんを観て、良かったので
立川らく兵で検索したらここにたどり着きました
この記事読んで泣きました
なんで泣いたのか分かりません
家元に惚れて 惚れ抜いて 落語の世界に入りました
まだ新参です

鼠穴聴きたかったな
立川流は 家元のDNAを受け継いでいると信じて
立川一門会に通い続けています

ブログ 拝見出来て良かったです
ありがとうございました
4. Posted by 4k    2013年09月17日 21:54
こまこさん 嬉しいコメントをありがとうございました。
> この記事読んで泣きました
> なんで泣いたのか分かりません

僕も自分で書いたこの記事読み返すと目頭熱くなりますよ。

談吉さんの会、今度は来月です。
http://blog.livedoor.jp/m_shike/archives/51910994.html
是非どうぞ。

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