2009年01月14日

雷門獅篭『雷とマンダラ』 5


『赤めだが』の影響で、その後も立川談志一門 すなわち落語立川流に関するさまざまな書物に手を出している。


立川志らくが、その落語への見識と愛情を全身で表現する『全身落語家読本』は、なかなかいい(あとでレビュー書きたい)。


ただ、落語そのものではなくて、『赤めだか』のように落語家修行を扱った傑作として、ご紹介したいのはこちらのマンガ。


残念ながら品切れ状態で手に入りにくいが『赤めだか』が気に入った方にはいちおう勧めておきたい、とりあえず僕は大好きな作品。

作者の立川 志加吾は志らくや談笑の弟弟子にあたる前座だったが、同時にこの作品をコミックモーニングに連載し、漫画家として活躍。

ところが「二つ目になろうという真剣さが足らない」という理由で他4名の前座とともに立川流を破門(俗に「第三次前座全員破門騒動」)。一年ののちに実施された破門者の復帰試験が実施され、受験するも不合格。拠点を名古屋に移し、当時名古屋唯一の落語家であった雷門小福に入門、雷門獅篭となった。

なあんて話は、あとでWikipediaでも見ておいてくれ。

ちなみにこのマンガに出てくる前座の全員が三回の騒動のどこかで破門を食らい、廃業・漫談に転向・他門に移籍などしている。残ったのは、なんと16年前座を務めた立川キウイと、立川こしら(志らくの弟子、作品内では「らく平」)くらいか。借金を抱えすぎた真打・快楽亭ブラックも一門を去った。


名古屋の芸人となった雷門獅篭が「日本一客の入らない」大須演芸場における芸人模様を描いたのが、こちら。




これがまた、6年前の前作に増して面白い。
出てくる人たちがあまりにも変で、貧乏くさくて、それだけに愛おしい。


たとえば『長屋の花見』(上方では『貧乏花見』)という古典落語がある。貧乏な長屋の一同が酒の代わりに薄めたお茶を飲みながら花見をするという笑える噺だが、実際のところそこまで貧しいというのは、本当はとても哀しいのだ…と扇橋師が権太楼師に言ったことがあるらしい。


落語にはそういう切り口がある。おかしくてやがて哀しい。


なかなか客が集まらないおんぼろの寄席であろうと、自らの内にしっかりとそのプライドを秘めて、今日も舞台に立つ芸人たちを取り巻く悲喜劇を、まさに落語的な視点…談志の言葉を借りれば「業の肯定」…で暖かくおかしく哀しく描いている。

中でも驚愕なのは、惜しくもこの世を去った大東 両(だいとうりょう)という伝説の芸人。


大東 両先生のプロフィール(ちなみに本当の敬称は「閣下」)

そして『雷とマンダラ』で見事に描かれた「紙きり1年戦争」!



芸暦60年、紙きり芸の達人が獅篭に出会ったことで創り出した、紙きりモビルスーツの世界。このくだりは本当に涙が出た。4コマギャグマンガなのに。


ああ、すげえなあ、芸人というのは。


なお本著は、その4割くらいが下ネタですのでご注意ください。
まあ芸人なんでね。




獅篭Blog


裏[4k]:雷門獅篭を聴いてみたくて名古屋・大須演芸場に行った


m_shike at 02:17コメント(0)トラックバック(0)落語 | 書籍 このエントリーをはてなブックマークに追加

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